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BGA実装:課題とベストプラクティス
6 0 Jul 09.2025, 15:25:54

ボール - グリッド - アレイ(BGA)技術は、コンパクトかつ高性能な回路設計を可能にし、現代の電子製品に革新をもたらしました。デバイスの小型化と高機能化が進む中、BGAパッケージはプリント基板(PCB)上に集積回路(IC)を実装するための主要なソリューションとなっています。しかし、その構造の複雑さから、設計、実装、検査の各工程において特有の課題が存在します。

 

本記事では、BGA実装における代表的な課題を解説するとともに、信頼性と品質を確保するためのベストプラクティスをご紹介いたします。

 

 

 BGA技術とは

 

BGAは表面実装型パッケージの一種で、ICを基板下部に配置されたはんだボールのグリッドによってPCBと接続します。従来のピンベースのパッケージ(PGAやQFP)と異なり、BGAでは直径0.3~0.75mmのはんだボールを用いて電気的 - 機械的接続を確立します。これにより、1000本以上のピン数にも対応可能で、スマートフォン、ノートPC、サーバー等に搭載されるマイクロプロセッサやFPGA、メモリなどに理想的な選択肢となっています。

 

 

 BGAが重要である理由

 

 高密度実装:コンパクトなスペースで数百の接続点を実現し、複雑な回路設計を可能にします。

 優れた電気性能:配線が短いためインダクタンスが小さく、高周波信号の歪みが軽減されます(30GHz超のRF用途でも有効)。

 放熱性の向上:はんだボールは従来のリードよりも効率よく熱を逃がし、BGAの熱抵抗は10~20°C/Wと低くなります。

 

 

 BGA実装における主要な課題

 

 1. はんだ接合の信頼性

 

リフロー温度プロファイルが適切でない場合、ボイド、冷接合、ブリッジなどの欠陥が発生します。接合面積の25%以上を占めるボイドは、導電性と放熱性を損ない、高出力用途では故障の原因となります。特にRoHS準拠の無鉛はんだは延性が低く、熱や機械的ストレスで割れやすくなります。

 

 2. 部品の位置ズレ

 

BGAは微細なピッチ(0.4?1.27mm)で構成されており、0.1mmのズレでも短絡や断線が発生します。±0.05mm以下の精度で実装可能な高性能マウンターが必要です。細ピッチ(≦0.5mm)では従来の「ドッグボーン配線」も困難です。

 

 3. 検査の難しさ

 

BGAのはんだ接合部はパッケージの下に隠れており、目視検査は困難です。AOI(自動光学検査)では表面の欠陥しか検出できないため、X線検査(AXI)が不可欠です。高精度X線装置は5μmまでの欠陥検出が可能ですが、コストが高く中小メーカーには負担となる場合があります。

 

 4. 熱管理

 

BGAは大きな熱を発生させ、リフロー時の過加熱(無鉛はんだで260°C超)は部品破損や熱暴走を招きます。また、PCB(FR4:CTE 14~17 ppm/°C)とBGA(セラミック:CTE 6~8 ppm/°C)のCTE差により、時間経過で接合部にクラックが発生しやすくなります。

 

 5. 配線設計の複雑さ

 

256?1000ピンを持つBGAでは、高密度配線(HDI)技術が必要です。ビア径0.15mm以下、配線幅0.076mm以下のマイクロビア設計や、適切なインピーダンス制御が要求されます。高速信号設計(3?5GHz)では、クロストークが信号の10%以上になることもあります。

 

 

 BGA実装を成功させるためのベストプラクティス

 

 1. PCB設計の最適化

 

 NSMD(ノンソルダーマスク定義)パッドの採用:パッドとレジストが重ならないため、はんだ強度が向上し、レジストのずれにも強くなります(推奨ピッチ:≧0.5mm)。

 サーマルビアの導入:直径0.2?0.3mmのビアをBGA下に配置し、熱抵抗を15°C/W以下に維持することで熱拡散を強化します。

 逃げ配線の早期計画:BGAの配置と配線を設計初期に行い、HDI基板(6~12層)とマイクロビアを活用することで高速信号のインピーダンス(50 ±10%Ω)を維持します。

 

 2. はんだペースト印刷の精度管理

 

 円形アパーチャの使用:直径100~150μmの丸穴により、はんだ量が安定し、印刷不良やボイド発生率を15%低減できます。

 適切なステンシル厚さの選定:0.1~0.15mm厚のステンシルで、細ピッチにも対応し、最適なはんだ量を確保します。

 高品質なペーストの選択:20~38μmの均一粒径の無鉛はんだ(Type 4)を使用することで、ブリッジや不足を防止します。

 

 3. リフロー工程の制御

 

 最適な温度プロファイルの設定:ピーク温度を235~250°C、液相温度(217°C)超で45?90秒保持し、過加熱を防ぎます。

 窒素雰囲気の活用:酸化を抑制し、空洞の発生を最大20%削減できます。

 温度均一性の監視:熱電対を使用して温度差を±5°C以内に抑え、局部的な加熱不良を防止します。

 

 4. 高度な検査技術の活用

 

 X線検査の導入:AXIにより、はんだボイドや未溶融などの内部欠陥を検出し、ボイド率10%以下を目指します。

 AOIの併用:実装ズレやはんだ残りなど、表面レベルの欠陥検出に有効です。

 バウンダリスキャン(JTAG)テスト:IEEE 1149.1規格により、物理プローブなしで電気接続を確認し、テスト時間を30%短縮できます。

 

 5. 熱的 - 機械的信頼性の向上

 

 CTEマッチング基板の選定:FR4やポリイミドなど、BGA封止材に近い熱膨張率を持つ材料を選定します(例:Isola 370HR)。

 コンプライアンス層の導入:熱や振動による応力を吸収する中間層を追加することで、BGAの耐久性を高めます。

 アンダーフィルの適用:エポキシ樹脂を用いて接合部を補強することで、高応力環境下での故障率を最大40%低減します。

 

まとめ

 

BGA実装は、今日の高性能かつ省スペースな電子設計に不可欠な技術ですが、実装精度、検査難易度、熱管理といったさまざまな課題も抱えています。最適な設計と実装手法、先進的な検査技術を採用することで、BGAの信頼性を高め、高品質な製品開発を実現できます。経験豊富な製造パートナーと協力することで、BGAの複雑さを新たな技術革新への機会へと変えることが可能です。


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