1. はじめに
ADAS(先進運転支援システム)がL4レベルへ高度化する中、自動車電子向けHDIには「高集積度」と「シグナルインテグリティ」の両立が求められます。ADASコントローラーのHDIは一般的に10層以上で構成され、レーダー、カメラ、超音波センサーなど複数の信号処理ブロックを統合します。特に伝送路のインピーダンス管理は、センサー信号の精度に直接影響します。
業界データでは、HDIのインピーダンス誤差が±5%を超えた場合、ADASの距離測定誤差が10cm以上に拡大する事例も報告されています。ある自動車メーカーでは積層設計の不適合によりインピーダンス偏差が8%となり、車線維持機能の誤判定率が15%を超えました。

自動車電子用HDIはAEC-Q200(車載電子部品信頼性試験標準)とIPC-2226(HDI設計基準)に準拠し、インピーダンス偏差は±5%以下であることが求められます。
PCBGOGOは累計60万枚以上の自動車電子用高信頼性HDIを製造しており、本稿ではADAS向けHDIの積層設計の要点、インピーダンス管理手法、そして量産適合の検証方法について解説します。
2. コア技術解析
自動車電子向け高信頼性HDI積層設計の核心は、「集積度」と「信号完全性」のバランスにあります。以下の2つの技術課題をクリアする必要があります。
(1) 積層構造の最適化
ADAS向けHDIは「信号層 – GND層 – 電源層 – 信号層」を基本とした対称構造が一般的で、層数は8層以上、GND層の占有率は30%以上が推奨されます。対称積層はEMC向上と基板反り抑制に有効です。
PCBGOGOの試験では、非対称積層ではHDIの反りが0.7%を超え、IPC-6012H Class 3が求める反り許容値(0.5%以下)を満たさないケースが確認されています。
(2) インピーダンス制御
ADAS向けHDIでは、50Ω(シングルエンド)、90Ω(差動)のインピーダンスが主に使用されます。インピーダンス値は層間厚み、誘電率、線幅に依存します。
計算式はIPC-2141(高周波基板設計基準)に基づき、以下で求めます。
Z = (60 / √εr) × ln (5.98h / W)
h:層間厚み
W:線幅
基材は高周波特性に優れた Rogers RO4350B(誘電率4.4±0.05、Tg 280℃)、プリプレグはRogers 1080(厚み0.05mm、誘電率4.4±0.05)が推奨されます。
銅厚は2oz(70μm)とし、AEC-Q200 Clause 4.2 が求める電流容量(3A/mm2以上)に対応します。
3. 実装可能な設計ソリューション
3.1 積層 – インピーダンス協調設計の3ステップ
① 積層計画
ADAS向け10層HDIの例:
信号層1 – GND層1 – 信号層2 – 電源層 – 信号層3 – GND層2 – 信号層4 – 電源層 – 信号層5 – GND層3
層間厚み設定:
信号層 – GND層:0.15mm±0.01mm
電源層 – 信号層:0.2mm±0.01mm
PCBGOGOの「JPE-Layer-HDI 6.0」で生成した積層案はIPC-2226 第7.3条に適合しています。
② 基材選定
RO4350B(厚み0.2mm/層)
プリプレグ:Rogers 1080(厚み0.05mm)
誘電率はベクトルネットワークアナライザ(JPE-VNA-800)で測定し、εr=4.4±0.03 を保持することでインピーダンス誤差を抑制します。
③ インピーダンス計算と最適化
50Ω(シングル)
線幅:0.3mm
層間厚み:0.15mm90Ω(差動)
線幅:0.25mm
線間:0.25mm
層間厚み:0.15mm
Altium Designerのインピーダンス計算機、さらにHyperLynxによる高速信号シミュレーションにより、インピーダンス偏差は±3%以内に収めることができます。
3.2 量産適合と信頼性検証
① 積層厚み検証
X-Ray測厚計(JPE-XR-Thick-600)により層間厚みを全数確認し、誤差を±0.01mm以下に管理します(AEC-Q200 Clause 4.3.2)。
② インピーダンス全数検査
JPE-Imp-600を用いた全数検査で以下を保証します。
50Ω:48.5Ω--51.5Ω
90Ω:87.3Ω--92.7Ω
合格率は99.5%以上を確保。
③ 信頼性試験
各ロットから10枚を抜き取り、以下を実施します。
高低温サイクル試験:-40℃ -- 125℃、1000サイクル
試験後のインピーダンス変動:±1%以内
PCBGOGOの試験はAEC-Q200 Clause 4.1に基づき、RoHS適合を含む総合レポートを提供可能です。
まとめ
自動車電子向け高信頼性HDI積層設計の要点は、
対称積層、安定した誘電率、精密なインピーダンス計算
の3つに集約されます。
PCBGOGOでは、
HyperLynx高速信号シミュレーション
AEC-Q200信頼性試験
RoHS合規サポート
など、自動車向けHDIに特化した技術サービスを提供し、ADASの量産安定性を支援します。