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通信および5G PCBメーカーが共有する設計要点 ― 精密な品質管理の実践
2 0 Sep 19.2025, 10:24:06

通信機器や5G対応デバイスにおいて、PCB設計の品質はそのまま性能と信頼性を左右します。基材の選定ミスは高周波信号損失の増大につながり、不適切な配線は高速信号のクロストークを引き起こします。また、接地設計が不十分であれば、EMI(電磁干渉)が規格値を超過する可能性もあります。従来のPCB設計と比較して、5G PCB設計では「高周波信号特性」「高速信号の完全性」「マルチアンテナ集積」「放熱要求」を同時に満たすことが不可欠です。本稿では、5G通信基板の設計における重要な4つの要点を解説し、具体的な数値や事例をもとに設計上の落とし穴を回避する方法を紹介します。

1. 材料選定 ― 高周波-高速-放熱の基盤

5G PCBの材料選定は「高周波での低損失」「高速伝送での低クロストーク」「高放熱性」の3点を軸に進める必要があります。基材は、使用する周波数帯やデータレートに応じて選びます。Sub-6GHz帯(2.6~3.5GHz)や10Gbps以下の用途では、改良型エポキシ基材(例:Rogers 4350B、Panasonic Megtron 6)が多く採用されます。一方で、ミリ波帯(24GHz以上)や25Gbps以上の高速伝送には、フッ素系基材(例:Rogers RT/duroid 5880)が有効です。さらに、基地局のPAモジュールなど高出力用途では、高熱伝導率基材や金属基板を用いることで、過剰な温度上昇を防ぎます。

銅箔については、導電率と表面粗さの管理が不可欠です。10GHzを超える高周波領域では、低粗さのVLP銅箔を用いることで、スキン効果による損失を抑制できます。また、銅箔厚は用途に応じて25~35μmが望ましく、信号品質と製造コストのバランスを取ることが重要です。

加えて、ソルダーレジストは低損失特性を持つ材料を選択し、厚みを25~30μmに管理することが推奨されます。表面処理では、RFパッドには金めっきを、高速信号パッドにはENIG+OSPなど複合処理を使うことで、信号品質と信頼性を確保します。

2. 高周波配線設計 ― 損失とインピーダンスの制御

5G PCBにおける高周波配線は、インピーダンス整合と伝送損失の最小化が設計の要です。RF回路の特性インピーダンスは一般的に50Ωで設計され、基材厚みや配線幅、銅箔厚を厳密に管理する必要があります。許容誤差は±1Ω程度であり、わずかな寸法偏差が反射や損失の増大を招きます。

さらに、配線長は可能な限り短く直線的に設計し、不要なビアを避けることが望ましいです。どうしてもビアを使用する場合には、スルーホールよりもブラインドビアを選択することで寄生成分を抑えられます。

5G基地局や端末に不可欠なMassive MIMOアンテナ設計では、多チャンネル信号を正確に分離する必要があります。チャネル間隔を十分に確保し、対称性を保ったレイアウトを行うことで、クロストークの低減と信号位相の一致を実現します。

3. 高速信号の完全性設計 ― クロストークとジッタ抑制

25GbpsクラスのCPRIや10Gbps USB 3.2といった高速インターフェースでは、信号の完全性を保つための差動配線設計が必須です。差動ペアは長さ差を3mm以下に管理し、一定の間隔を維持することでインピーダンスの安定を確保します。

また、電源プレーンの分割やデカップリングコンデンサの最適配置により、電源ノイズを低減することが重要です。電源インピーダンスを100MHz帯で0.1Ω以下に抑えることで、信号誤り率を規格値内に維持できます。

4. 接地とEMC設計 ― 電磁干渉を防ぐための必須対策

高周波 - 高速信号を扱う5G PCBでは、接地とEMC設計が不可欠です。接地プレーンは層ごとに確保し、RF領域 - 高速領域 - 電源領域を分離して単点接地で結合することが推奨されます。

さらに、RFモジュールや高速IC領域には金属シールドケースを設置し、電源ラインにはコモンモードチョークやフィルタコンデンサを配置することで、不要輻射を効果的に抑制できます。ミリ波モジュールにおいては電磁吸収材の使用も有効で、EMIレベルを5~10dB低減できます。

まとめ

通信および5G PCBの設計は、従来以上に「精密さ」が求められます。材料選定から高周波配線、高速信号の完全性、接地 - EMC対策に至るまで、各段階で高周波 - 高速特性を念頭に置いた設計を行うことが不可欠です。適切な設計ルールを厳格に適用することで、5G機器の高信頼性と優れた信号品質を確保し、市場で求められる性能を実現することができます。


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