1. はじめに
5G モジュール(Sub6GHz/ミリ波)では信号伝送速度が10Gbpsを超え、高速信号を正確に伝えるためにはHDI PCBの阻抗制御が極めて重要です。業界データによれば、阻抗誤差が±10%を超えると5G信号のビットエラー率は約50%上昇し、あるモジュールメーカーでは阻抗が規格外(実測58Ωから65Ω、標準50Ω±5%)となった結果、5G切断率が22%に達し、通信事業者の認証を通過できませんでした。

5G モジュール用HDIの阻抗はIPC-2141(高周波プリント基板規格)第6章に準拠し、主要帯域(3.5GHz、26GHz)における許容誤差は±5%以内が求められます。PCBGOGOは5G HDI分野で7年の実績を持ち、量産モジュールにおける阻抗ばらつきを±3%以内で安定的に制御しています。本稿では、5G モジュール向けHDI PCBの阻抗制御原理、シミュレーション方法、量産管理手法について技術的に解説し、5G信号伝送の課題解決に役立つ情報を提供します。
2. コア技術の解析
5G HDIの阻抗制御は「多パラメータの協調最適化」が鍵
IPC-2226(HDI設計規格)第7章および高周波信号の特性に基づき、阻抗は以下の3要素で大きく変動します。
① 誘電率(εr)の安定性
5G の高周波帯(特に26GHz)では、誘電率が0.1変動するだけで阻抗が約3%変動します。
一般的なFR4はεr変動が±0.3
→ 阻抗誤差は±9%に達し、5G用途では不十分εr変動±0.05以下の高周波材料(例 RO4350B)が推奨
② 線幅と線間の精度
5G HDIでは
差動線幅:0.12mmから0.15mm
線間距離:0.12mmから0.15mm
公差:±0.01mm以下
線幅が0.02mmずれると阻抗誤差は約5%増加し、GB T 4677 第4.1項が要求する高精度管理が必要です。
③ 層間厚さの均一性
HDIスタックアップでは層間厚み誤差±0.005mm以内が基本です。厚みが0.01mm変動すると阻抗は約2%変動するため、IPC A 600G クラス3の基準に従った管理が必須です。
5G モジュールで使用される主要阻抗値
単端50Ω(RF信号)
差動90Ω(PCIe 4.0など高速データライン)
単端阻抗計算式
Z = 60 ÷ √εr × ln(5.98h ÷ W)
(h:層間厚さ、W:線幅)
PCBGOGOがRO4350B(εr=4.4)を用いてHyperLynxで検証した50Ωライン(W=0.15mm、h=0.1mm)では、阻抗誤差は±2%以内に収まります。
3. 実装ソリューション
3.1 阻抗制御の4ステッププロセス
材料選定から量産検査までの一貫管理
① 材料選定
推奨材料:
Rogers RO4350B(εr=4.4±0.05、Df=0.0037)
コスト重視の場合:生益 S1130(εr=4.3±0.08)
各ロットの材料はベクトルネットワークアナライザ(JPE VNA 900)でεrを測定し、±0.05を超える場合は受入不可とします。
② シミュレーション設計
HyperLynxでHDIスタックアップモデルを構築。
例:6層 2+2(Signal Ground Power Power Ground Signal)
層間厚さ:0.1mm±0.005mm
εr:実測値(例 4.42)を入力
50Ωライン:W=0.15mm、h=0.1mm
90Ω差動ライン:W=0.12mm、S=0.12mm、h=0.1mm
シミュレーション誤差:±2%以内
誤差が±3%を超える場合、Wまたはhを±0.005mm調整。PCBGOGOでは48時間以内に最適化案の提示が可能です。
③ 配線実行(Altium Designer)
50Ω:線幅0.15mm±0.005mm
90Ω差動:線幅0.12mm±0.005mm、線間0.12mm±0.005mm
差動ペアの等長差:3mm以内(遅延差10ps以下)
PCBデータ上に阻抗ラインを明示(例 RF 50Ω、PCIe 90Ω)
④ 量産工程の管理
圧着工程
RO4350B圧着温度:180℃±2℃
圧力:28kg/cm2
保持時間:90分
層厚誤差:±0.005mm以内
レーザー厚測定器(JPE Laser 800)でロット毎に50枚検査
エッチング
酸性エッチング
エッチングファクタ:4対1以上
線幅精度:±0.005mm
IPC TM 650 2.3.17に準拠し2時間毎に10枚検査
阻抗検査(全数検査)
機種:JPE Imp 600
単端50Ω:48.5Ωから51.5Ω
差動90Ω:87.3Ωから92.7Ω
不良は即時トレースバックで原因を特定します。
3.2 高周波干渉対策
5G モジュール特有のミリ波問題への対応
シールド設計
RFラインの両側にGNDを配置(幅0.2mm以上)
信号ラインとの距離は0.15mm以上
シールド効果:26GHz帯で40dB以上
ビア最適化
RFビア径:0.2mm
ビア間隔:0.5mm以上
GNDビアは周囲に0.3mmピッチで配置
ビアによる阻抗変動:±5%以内
吸波材料の適用(ミリ波対策)
厚さ:0.1mm
吸収率:26GHzで80%以上
PCBGOGOはHDI製造と吸波材実装を一体で対応可能です。
4. まとめ
5G HDIの阻抗制御は材料 精密設計 工程管理の総合技術
5G モジュール向けHDI基板の阻抗制御では、以下の3点が最重要となります。
誘電率の安定性
線幅 線間 層厚の精密管理
高周波帯におけるシールド 吸波対策
PCBGOGOは以下の一貫サービスを提供しています。
材料のεr実測データ(ロット毎にレポート提出)
HyperLynxによる高精度シミュレーション(誤差±2%以内)
量産時の線幅 層厚精度±0.005mm管理
全数阻抗検査 合格率99.5%以上
ミリ波(26GHz以上)の安定性を高めるため、PCBGOGOでは
5G HDIとLTCCのハイブリッド構造
阻抗と減衰量を同時に評価する統合シミュレーション
の研究を進めています。
5G モジュールメーカーには、周波数別の阻抗許容値と減衰基準を定義した「高周波阻抗保証契約」をPCBGOGOと締結することを推奨します。これにより、量産段階での認証リスクを大幅に低減できます。