
1. 高周波用途ごとの積層設計のポイント
5G基地局では、28GHzミリ波信号の伝送損失を最小化し、EMCクラスAの高い電磁干渉耐性を確保することが重要です。このため、介質材料の選定やシールド層設計に重点を置きます。射頻モジュールでは、低位相雑音(相位ノイズ≤-100dBc/Hz@1kHz)とインピーダンスの安定性(偏差≤±2%)を重視し、グランドプレーンの連続性と信号分離を設計の中心とします。高速シリアル通信では、低クロストーク(NEXT≤-35dB@32Gbps)と電源ノイズ抑制(リップル≤20mV)が要求され、信号層と電源層の隔離が重要です。衛星通信向けPCBでは、耐放射線(総線量100krad)や広温度範囲(-55?125℃)の安定性が求められ、材料の環境耐性と構造安定性が設計の要点となります。
2. 5G基地局(28/39GHz)PCB積層設計
5G基地局のPCBは、28GHzのミリ波信号伝送損失制御と外部EMI耐性を重視します。典型的には6層構造で、上層から順に、グランドプレーン(銅厚70μm、EMC強化)、射頻信号層(28GHz、帯状線、50Ω±2%)、グランドプレーン(銅厚35μm、Ra≤0.1μm)、電源層(12V、銅厚70μm)、グランドプレーン(銅厚35μm)、射頻信号層(39GHz、50Ω±2%)で構成されます。
材料選定は、低損失のRogers 4350B(Df=0.0037@28GHz、Dk=3.48±0.05)を使用し、プリプレグはDf≤0.004@28GHzの低損失タイプを採用して層間介質の一貫性を確保します。シールド設計では、L1層全域を覆い、0.4mm間隔の接地ビア(孔径0.3mm)を配置することで、28GHzでEMC減衰≥40dBを実現します。信号層では、高平坦度電解銅(Ra≤0.1μm)を使用し、レーザードリルで孔径0.15mm、残留長≤0.08mmの過孔を配置して損失を最小化します。
3. 射頻モジュール(2?5GHz)PCB積層設計
射頻モジュールのPCBは、低位相雑音と信号分離が求められます。4層構造を採用し、上層から射頻信号層(5GHz、50Ω±2%)、グランドプレーン(35μm、Ra≤0.1μm)、電源層(5V、銅厚35μm、グランドプレーンから0.2mm隔離)、射頻信号層(2GHz、50Ω±2%)で構成されます。
グランドプレーンは開槽や不要な過孔を避けることで位相雑音を15dBc/Hz低減できます。信号層間は垂直方向にずらして配置し、隔離度を45dB@5GHz以上に確保します。また、異周波数信号層間には幅0.5mm、銅厚35μmの隔離地条を設けてクロストークを抑制します。
4. 高速シリアル通信(PCIe 5.0 32Gbps)PCB積層設計
高速シリアル通信向けPCBは、低クロストークと電源インテグリティが重要です。8層構造を採用し、差動信号層と電源層、グランドプレーンを適切に分離して配置します。差動ペアの間隔Sは0.2mm、隣接ペア距離は0.8mm以上としてNEXT≤-35dB@32Gbpsを確保します。電源層と信号層の隔離によりノイズは≤5mVに抑えられ、電源インピーダンスは100MHzで≤0.008Ω、リップルは≤20mVを実現します。
5. 衛星通信(12?18GHz)PCB積層設計
衛星通信向けPCBでは、耐放射線性能、広温度範囲での安定性、低損失が求められます。6層構造で、対称積層設計を採用し、上層からグランドプレーン(銅厚70μm)、射頻信号層(18GHz、50Ω±2%)、グランドプレーン(35μm)、電源層(28V、銅厚105μm)、グランドプレーン(35μm)、射頻信号層(12GHz、50Ω±2%)と構成します。
基材にはポリイミド(Tg≥250℃、耐放射線総量100krad、-55?125℃)を使用し、Df=0.004@18GHzを確保。銅箔は高延性電解銅で、温度サイクル1000回でもクラックが発生せず、広温度範囲で翘曲度≤0.1%を実現します。
まとめ
用途別高周波PCBでは、5G基地局、射頻モジュール、高速シリアル通信、衛星通信ごとに積層構造、材料選定、設計手法が異なります。PCBメーカーは用途要求に応じた差別化設計と精密なプロセス管理により、信号損失の最小化、クロストーク抑制、EMC対策を実現できます。