
高周波PCB(積層PCB)は、10GHz以上の高周波信号伝送において、材料選定とプロセス管理が性能に直結します。本記事では、高周波PCBの積層設計における材料パラメータ、基材選定、銅箔 - プリプレグ(PP)選定、およびプロセス協調技術について解説し、実務に役立つポイントを紹介します。
1. 高周波PCB積層における材料パラメータの重要性
高周波PCB設計では、基材の誘電率(Dk)、誘電正接(Df)、銅箔粗さ(Ra)、Tgなどのパラメータが信号伝送性能に直結します。特に10GHz以上の信号では、以下の条件が推奨されます:
Dk:安定かつ低め(Dk≤3.8 10GHz)、偏差±0.05以内、周波数1?40GHzでDk変動≤5%
Df:極低(Df≤0.004 10GHz)、Dfを0.001下げるごとに28GHz信号の伝送損失を10mmあたり0.05dB低減
銅箔粗さ Ra:≤0.1μm(高周波ではスキン効果が顕著で、粗さ増加は損失増加の原因)
環境耐性:5G基地局では85℃/85%RH耐性、衛星通信では-55?125℃耐性と放射線耐性
高周波PCBにおける材料選定の不適切は、伝送損失を50%以上増加させる可能性があります。メーカーは「材料パラメータと高周波性能の相関モデル」を活用し、最適材料を選定することが重要です。
2. 高周波PCB積層の基材選定
(1) 高周波用途別基材
5G基地局 - ミリ波(28/39GHz):Rogers 4350B、Taconic TLX-8
Dk=3.48±0.05 28GHz、Df=0.0037 28GHz、Tg=150℃
28GHz信号100mmの伝送損失は2.8dB(一般FR-4は5.6dB)
高速シリアル通信(PCIe 5.0 32Gbps、DDR5):生益 S1000-2、松下 R-1515
Dk=3.8±0.05 10GHz、Df=0.004 10GHz、Tg=170℃、Ra=0.08μm
コストを抑えつつ高周波安定性を確保
射頻モジュール(2?5GHz):Rogers 4003C、生益 S9100
Dk=3.55±0.05 5GHz、Df=0.0027 5GHz、Tg=140℃
低Dfで5GHz信号損失を最小化
衛星通信?高温環境(-55?125℃):Rogers RT/duroid 5880、ポリイミド基材
Dk=2.2±0.05 18GHz、Df=0.0009 18GHz、耐放射線100krad
超高周波信号に最適、耐環境性に優れる
(2) 基材厚さとインピーダンス設計
微帯線50Ωの場合(Dk=3.8):
H=0.1mm → W=0.18mm
H=0.15mm → W=0.22mm
H=0.2mm → W=0.26mm
厚さ偏差±0.005mmでインピーダンス偏差±1Ω
多層積層では、高周波信号層に低Df基材、電源層?低速信号層にFR-4を組み合わせ、Tg差≤30℃で剥離防止
3. 高周波PCB積層の銅箔 - プリプレグ(PP)選定
(1) 銅箔
タイプ:VLPまたはRTF、Ra≤0.1μm
厚さ:35μmで28GHzスキン深さ対応、グランドプレーンは70μm
効果:VLP銅箔で伝導損失を30%低減
(2) プリプレグ(PP)
誘電特性:基材に一致(偏差≤±0.1)、Df≤0.004
流動性と厚さ:流動度15?25%、層間隙≤0.05mm、気泡率≤0.1%、総厚偏差≤±5%
4. 高周波PCB積層のプロセス協調
(1) ラミネーション
昇温1?2℃/min、固化180℃±2℃、保温60±5分
圧力30±2kg/cm2、層間空隙≤5μm
超音波測定で厚さ偏差≤±3%
(2) ドリル加工
孔径≤0.2mmはレーザードリル推奨、精度±1μm、Ra≤0.5μm
バックドリルで残孔長≤0.1mm、寄生容量0.2pF→0.1pF
(3) 表面処理
高周波信号パッドは金めっき推奨(金0.1μm、Ni 2μm、接触抵抗≤50mΩ)
地平面 - シールド層はOSP可(厚さ≤0.5μm)
まとめ
高周波PCB積層では、材料選定(基材、銅箔、プリプレグ)とプロセス管理(ラミネーション、ドリル、表面処理)が高周波伝送性能に直結します。適切な設計と精密な製造により、10GHz以上の信号でも最小損失で伝送可能です。