設計段階から防ぐPCBスルーホールパッドのはんだ排出不良対策
基板製造および実装プロセス全体において、設計工程は最終品質を左右する最初の防衛ラインです。スルーホールパッドにおけるはんだ排出不良を根本から防止するためには、実装工程での対症療法ではなく、設計段階から防止思想を組み込むことが不可欠です。PCBGOGOが提供するPCB設計から製造までの一体化サービスにおける実務経験を基に、設計起点でスルーホールはんだ排出不良を回避するための重要な設計ポイントを解説します。

1. スルーホールパッドの寸法バランスを正確に設計する
はんだ排出不良対策において、最も重要なのがスルーホールとパッドの寸法比率です。多くのエンジニアは、スルーホール径が部品リードに近いほど接合強度が高いと誤解しがちです。
しかし、スルーホール径とリード径の隙間が0.1mm未満の場合、溶融はんだが十分に流入できず、内部圧力の上昇によりパッド外側へはんだが押し出されやすくなります。一方、隙間が0.3mmを超えると必要なはんだ量が増え、結果として排出不良リスクが高まります。
PCBGOGOの設計基準では、スルーホール径はリード径より0.15から0.25mm大きく設定し、パッド径はスルーホール径より0.6から0.8mm大きくすることを推奨しています。この比率により、十分なはんだ充填性とパッド表面張力による保持力を両立できます。
2. ソルダーレジスト開口寸法を最適化する
ソルダーレジストは、基板保護や短絡防止だけでなく、はんだの流動範囲を制御する重要な役割を担います。スルーホールパッド部におけるソルダーレジスト開口寸法は、はんだ付着状態に直結します。
開口が大きすぎる場合、はんだが自由に拡散し、非接合領域へ流出しやすくなります。逆に小さすぎると、パッドの有効接触面積が減少し、はんだが縁部から溢れやすくなります。
PCBGOGOでは、ソルダーレジスト開口径をパッド径より0.1から0.2mm小さく設定し、かつ開口端とスルーホール縁との距離を0.2mm以上確保することを推奨しています。これにより、レジスト層が囲いとして機能し、はんだ排出不良を効果的に抑制できます。
3. 特殊条件では異形パッド設計を活用する
高密度PCBや大電流用途のスルーホールでは、一般的な円形パッドでは排出不良防止効果が不十分な場合があります。そのような場合には、異形パッド設計が有効です。
涙滴形パッドは、導線とパッドの接続部が滑らかな曲線となるため、はんだの濡れ性と付着力が向上し、接合境界部でのはんだ滞留や排出不良を防止します。角形パッドは表面積が大きく、大径スルーホールにおいて強い表面張力を確保できるため、溶融はんだの流出抑制に効果があります。
PCBGOGOでは、新エネルギー車向けPCB設計において涙滴形スルーホールパッドを多用し、大電流条件下でのはんだ排出不良を効果的に解消しています。
4. 積層構造とスルーホールタイプの選定を重視する
多層PCBでは、貫通スルーホールの使用がはんだ排出不良リスクを高める要因となります。ブラインドビアやベリードビアを採用することで、はんだ充填量を大幅に低減でき、基板裏面への逆流出を構造的に防止できます。
また、多層PCB設計では、スルーホール直下に大面積の銅箔を配置することは避けるべきです。銅箔の高い熱伝導性により、はんだが急冷され、充填不足や局所的な排出不良を引き起こす可能性があります。
まとめ
PCB設計は製品品質の中核であり、スルーホールパッドのはんだ排出不良を防ぐ最重要工程です。寸法バランスの最適化、ソルダーレジスト開口設計、異形パッドの活用、適切なスルーホール選定を実践することで、設計起点から不良発生確率を大幅に低減できます。
PCBGOGOは、専門的な設計チームと充実した工程検証体制を有し、設計最適化から製造までを一貫してサポートしています。高いはんだ接合信頼性を実現したいエンジニアにとって、設計段階からの最適化は最大の品質投資と言えるでしょう。