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HDI基板におけるブラインドビアの隠れたメリット
10 0 Jul 29.2025, 16:05:01

進化を続けるエレクトロニクスの世界において、HDI高密度相互接続)PCBは、より小型-高速-高性能なデバイス実現の最前線に立っています。その中でも特に注目される技術が「ブラインドビア」の活用です。この記事では、HDI基板におけるブラインドビアの真の価値に迫り、その利点を深掘りしていきます。

 

ブラインドビアとは何か?

 

ブラインドビアとは、外層から内層への接続に用いられるビア(ビアホール)の一種で、基板全体を貫通せず、片面からしか見えない構造を持ちます。通常、レーザードリルで高精度に加工され、銅めっきによって導通性を確保します。

 

HDI PCBでは、部品密度が高くスペースが限られる中で、特定の層同士を接続するブラインドビアが重要な役割を果たします。これにより、必要のない層を通過せずにすみ、より自由度の高い設計が可能になります。

 

HDI基板におけるブラインドビアの主な利点

 

1. コンパクト設計へのスペース最適化

 

ブラインドビア最大の魅力の一つは、基板上の貴重なスペースを節約できる点です。スルーホール(貫通ビア)はすべての層を貫通し、他の層での配線の妨げとなりますが、ブラインドビアは必要な層間だけを接続し、残りの層を自由に活用できます。これにより、基板サイズを最大30%縮小できるケースもあります。

 

2. 高速信号における信号完全性の向上

 

高速回路設計では、信号完全性(シグナルインテグリティ)が製品性能に直結します。ブラインドビアは信号の伝送経路を短く保ち、反射やクロストークを抑制します。特に10GHz以上の高周波信号では、スタブ(未使用のビア部分)を排除することにより、信号損失を抑えることができます。これにより、ノイズや遅延の発生を防ぎ、通信の安定性が向上します。

 

3. 配線密度と設計自由度の向上

 

ブラインドビアを活用することで、ビアが不要な層に配線スペースを確保でき、より高密度な回路設計が可能になります。たとえば、スマートウォッチなどのウェアラブル端末において、ブラインドビアの使用により内層の配線密度を50%以上向上させることができます。

 

4. 信頼性の向上

 

ブラインドビアは、深さが浅く、アスペクト比(ビアの深さと径の比率)が低いため、めっき不良や空隙が発生しにくくなります。通常、HDI設計ではアスペクト比1:1以下が推奨されており、高い信頼性を確保できます。これは特に、自動車?航空宇宙?医療機器など、厳しい環境下でも安定動作が求められる用途において有効です。

 

コストと性能のバランス

 

確かに、ブラインドビアはレーザードリルや順次積層など高度な技術を必要とするため、一般的なスルーホール設計よりも製造コストが高くなる傾向にあります。1平方インチあたりの製造コストは10?20%高くなる場合があります。

 

しかし、基板サイズや層数の削減によって、材料費や製造工程数が減り、トータルでのコスト削減が可能になります。さらに、信号品質の向上による製品性能の向上や歩留まり改善によって、コスト以上の価値を得られることが多いです。

 

高速PCBにおけるブラインドビアの活躍

 

*通信機器:5G通信(28GHz以上)の高速信号伝送において、ブラインドビアは信号損失を抑え、安定した通信品質を実現します。

*コンシューマー機器:スマートフォンやタブレットでの超薄型化-高性能化を支えます。

*医療機器:ポータブル診断装置やウェアラブル医療デバイスの小型化と多機能化に貢献します。

*自動車電子:ADASやECUなど、厳しい耐熱-耐振動環境において高い信頼性を発揮します。

 

設計時の注意点

 

ブラインドビアを活用するためには、層構成やビア径 - 深さなどを正確に設計し、製造メーカーの対応範囲を確認することが不可欠です。特に、シミュレーションを活用したインピーダンス制御や信号解析は、設計初期段階で行うのが理想的です。

 

また、信頼できるHDI製造パートナーと連携することで、設計最適化やコストパフォーマンスの最大化が可能になります。

 

まとめ

 

ブラインドビアは、HDI基板の設計における隠れたキーテクノロジーです。スペースの最適化、高速信号の品質向上、配線の柔軟性、そして高い信頼性など、現代のエレクトロニクス製品に求められる性能を一手に引き上げる力を持っています。

 

コストとのバランスを考慮しつつも、長期的には設計効率と製品競争力の向上につながるため、次世代電子機器開発において積極的に活用する価値があります。

 

これからのPCB設計では、ブラインドビアの可能性を最大限に引き出し、よりコンパクトで高性能な製品を目指していきましょう。


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