SMT生産における「異形部品実装」とは何か
SMT実装工程において「異形部品実装」という言葉を耳にすることがありますが、具体的にどのような特殊工法を指すのでしょうか。また、なぜ通常のチップ部品実装よりも難易度が高いのでしょうか。
結論から言えば、異形部品実装とは、形状や構造が標準化されていない部品を高精度で実装するためのSMT特殊工法であり、位置決め精度、実装荷重制御、品質検査のすべてにおいて高度な技術が求められます。
異形部品実装の定義
PCBのSMT実装工程において、異形部品実装とは、抵抗やコンデンサなどの標準チップ部品とは異なり、形状が不規則、サイズが大きい、またはリード構造が特殊な電子部品を実装する工程を指します。
一般的なSMT部品である0402や0603サイズのチップ抵抗、QFPやBGAパッケージのICは、外形や端子ピッチが規格化されており、マウンターによる自動認識と実装が容易です。一方、異形部品には以下のようなものが含まれます。
コネクタ
ソケット
放熱部品
金属ケース付きセンサ
特殊リード形状を持つリレー
これらの部品は形状や重量、端子配置が多様であるため、通常のSMT実装条件では対応が困難となります。
異形部品実装における3つの技術的課題
1. 視覚認識の難易度が高い
通常のSMT実装では、光学カメラによる外形認識と端子位置検出で十分ですが、異形部品の場合、金属面の反射や端子の底面配置などにより、従来の2Dビジョンでは正確な位置検出が困難です。
そのため、異形部品実装では、高精度ビジョンシステムやレーザー測定、3D認識技術を組み合わせた特殊工法が用いられます。
PCBGOGOでは、異形部品実装に対応する際、事前に部品の3Dモデルデータをマウンターへ登録し、実装位置精度を±0.05mmレベルまで高めています。
2. 吸着および実装荷重の制御が難しい
異形部品は、標準チップ部品と比べて重量が数十倍になるケースもあり、吸着力や実装時の押し付け荷重の最適化が不可欠です。
吸着力が不足すると部品落下の原因となり、過剰な吸着や加圧は、樹脂ケースやリード端子の破損を引き起こします。また、実装圧が不足すると、ランドとの接触不良によるはんだ不良が発生します。
このため、異形部品実装では、部品ごとに最適な吸着条件と実装荷重を自動調整できる自律制御機能を備えたマウンターが必要となります。
3. 実装後の位置補正と品質確認が重要
異形部品は実装後の端子平坦性やランドとの位置ズレが、はんだ品質に直接影響します。例えば、ピン付きコネクタがわずかに傾いた状態でリフロー工程に入ると、ショートや未接合といった不良につながります。
そのため、異形部品実装後には、オフラインビジョン検査や追加の位置補正工程を設け、実装精度を再確認するのが一般的です。必要に応じて手動補正を行うことで、量産時の品質安定性を確保します。
なぜ異形部品実装が重要なのか
近年のPCB設計では、産業機器、車載電子機器、制御基板を中心に、異形部品の使用比率が急速に高まっています。
自動車用PCBにおけるOBDコネクタ、産業制御基板における航空コネクタなどは、製品の信頼性を左右する重要部品です。
PCBGOGOでは、異形部品実装に対応するため、部品形状に合わせた専用吸着ノズルを個別設計しています。円形部品用、長尺部品用など、最適なノズル選定により、実装成功率と量産安定性を向上させています。
まとめ
異形部品実装の本質的な難しさは、非標準部品に対する高精度な位置決め、実装荷重制御、そして品質検査にあります。
この特殊工法を確実に運用できることが、高難易度SMT実装案件を受注できるPCBメーカーとしての技術力の指標となります。
高度化する電子機器設計に対応するためにも、異形部品実装技術は今後ますます重要な役割を担っていくでしょう。