1. はじめに
人工知能(AI)メガネはリチウム電池(通常容量300mAh--500mAh)で駆動されますが、PCB自体の消費電力は全体の20%--30%を占めます。業界データによると、未最適化のAIメガネPCBでは静止時消費電流が50mA以上、動作時消費電流が300mAを超え、バッテリー駆動時間はわずか3--4時間となり、ユーザーの「6時間以上」要求を大きく下回ります。あるスマートグラスメーカーではPCBの消費電力が高すぎたため、発売後に「バッテリー持ちが悪い」とユーザーからクレームが相次ぎ、売上が40%減少しました。

PCBGOGOは低消費電力PCB設計に6年以上注力し、開発したAIメガネPCBは静止時消費電流≤30mA、動作時消費電流≤220mAを達成。メーカーの製品バッテリー駆動時間を5.5時間以上に延長することに成功しています。本記事ではPCBの消費電力の根源、電源配置最適化、放熱設計のポイントを解説し、電源エンジニア向けの実践的な低消費電力ソリューションを提供します。
2. コア技術解析
AIメガネPCBの消費電力は主に「電源配線損失」と「放熱不良による追加消費電力」に起因します。IPC-2221第5.2条(電源配線設計)およびGB/T 19226第4.3条(エネルギー効率制限)に準拠する必要があります。
電源配線損失は「配線抵抗」によって決まります。抵抗はR=ρL/S(ρは銅の抵抗率、Lは配線長、Sは断面積)で計算されます。従来のPCB電源配線(幅0.2mm、銅厚1oz)は抵抗約0.5Ω/m、1A電流時の損失電力は0.5Wです。最適化後(幅0.3mm、銅厚2oz)は抵抗0.2Ω/m、損失電力0.2Wで、60%低減されます。
放熱不良はチップ温度上昇により消費電力を増加させます。チップ温度が10℃上昇すると消費電力は8%増加します(例:プロセッサが40℃から60℃に上昇すると消費電力16%増)。IPC-9701(PCB熱性能標準)第3.2条に準拠します。
低消費電力PCBの設計ポイントは以下の通りです。
電源配線銅厚≥2oz(70μm)で抵抗を低減
電源配置は「近接給電」を採用(チップ電源ピンと電源モジュール距離≤10mm)
放熱領域(例:プロセッサ下部)に「銅箔オープンウィンドウ」を設け、放熱面積を増加(IPC-2221第7.3条参照)
3. 実践的な設計-製造方法
3.1 低消費電力設計の4ステップ
電源配線設計
主電源配線(3.7Vリチウム電池供給線):幅0.3mm~0.4mm、銅厚2oz(70μm)、抵抗≤0.2Ω/m、R=ρL/S(ρ=1.72×10^-8Ω·m)で計算
分岐電源配線(センサー給電線など):幅0.2mm、銅厚1.5oz(52.5μm)、抵抗≤0.3Ω/m
配線迂回を避け、長さ≤15mm(プロセッサ電源線は電源モジュールからピンまで≤10mm)
接地最適化
「単一点接地」を採用(電源GNDと信号GNDをPCB端で単一点接続)し、グランドループによる消費電力増加(10%~15%)を防止
接地配線銅厚2oz、幅≥0.3mm、接地抵抗≤50mΩ(IPC-2221第6.1条準拠)
放熱設計
高消費電力チップ(プロセッサ、Wi-Fiモジュール)下部PCBに「銅箔オープンウィンドウ」を設け、覆銅面積≥チップ面積1.5倍、開口領域にハンダレジストなし
チップ間距離≥0.5mm、局所的な熱集中を防止(距離<0.3mmで局所温度5℃~8%上昇)
高熱伝導基材採用(生益S1130、熱伝導率0.35W/(m·K)、従来FR-4より25%高)
部品選定
低消費電力部品を採用(例:プロセッサはQualcomm XR2 Gen 2低消費電力版、静止時消費電流≤10mA)
電源モジュール出力端に「低ドロップアウトレギュレータ(LDO)」(TI TPS7A4700、静止電流≤1μA)を並列配置し、電圧変動を抑制
3.2 消費電力検証と最適化
静止時消費電力テスト:PCB空荷時(電源モジュールのみ稼働)、直流電源アナライザJPE-DCA-600(精度±1μA)で測定、静止電流≤30mA
動作時消費電力テスト:PCBフル負荷(プロセッサ+Wi-Fi+センサー同時稼働)、電流≤220mA、消費電力≤0.814W(3.7V×0.22A)
温度テスト:フル負荷1時間後、赤外線サーモグラフィJPE-IR-800(精度±0.5℃)でチップ表面温度測定≤55℃(60℃超過時は放熱改善)、IPC-9701第4.1条準拠
4. まとめ
AIメガネPCB低消費電力設計は、「配線損失低減」と「放熱最適化」が核心です。電源配線の銅厚増加、配線長短縮、銅箔オープンウィンドウの導入により達成されます。さらに低消費電力部品とLDOレギュレータを組み合わせることで安定した消費電力を確保します。
PCBGOGOは「低消費電力PCB設計+消費電力検証」サービスを提供しており、電源配線シミュレーション(抵抗と損失の事前計算)、放熱設計、フル負荷消費電力検証まで対応可能で、PCBの消費電力を確実に規格内に収めます。