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PCB設計における5つの致命的なミス:細部の見落としが製品を台無
8 0 Aug 14.2025, 17:33:09

PCB設計は、限られたスペースの中に精密な「電子都市」を構築する作業です。わずかなミスが信号の歪みやデバイスの焼損、さらにはプロジェクト全体の失敗につながる可能性があります。経験豊富なエンジニアは「ハードウェア不良の9割は設計段階に原因がある」とよく口にします。ここでは、PCB設計において特に多い5つの致命的な間違いを取り上げ、その背後にある原理や実際に起こったトラブルを解説しながら、設計段階で潜むリスクを排除するための方法を紹介します。

 

1. グラウンド設計の混乱:信号干渉の温床

 

グラウンド設計はPCBの「基礎」にあたります。しかし初心者の多くは、すべてのグラウンドピンを無造作に接続してしまい、結果として不安定な動作を引き起こします。例えば、アナロググラウンドとデジタルグラウンドを安易に共通化すると、微弱なアナログ信号がデジタル回路の大電流ノイズに埋もれてしまいます。高周波回路では、配線のインダクタンスがインピーダンスとなり、グラウンドが実質的に機能しなくなることもあります。

正しい方法は「分割グラウンド+単一点接続」です。アナログ回路とデジタル回路を物理的に分離し、最後に一点で接続します。高周波モジュールの周囲にはグラウンドプレーンを敷き、λ/20間隔でビアを配置して安定した基準電位を確保します。

 

2. 電源配線の軽視:突然のシャットダウンを招く罠

 

電源ラインは電子回路の「血管」にあたりますが、単に太さだけを重視してレイアウトやビア設計を怠ると、負荷変動時に電圧降下を起こし、機器が突然停止する危険があります。電源経路が長すぎたり、電流に対してビア数が不足している場合、またデカップリングコンデンサをICの近くに配置していない場合は特に危険です。

設計の基本は「最短経路」と「十分なビア数」です。例えば1Aの電流には0.3mm径のビアを2つ用いることが推奨されます。また、ICの電源ピン近くに100nFのセラミックコンデンサと10μFの電解コンデンサを配置し、局所的な電源安定化を図ることが重要です。

 

3. 信号線の乱雑な配線:高速信号を破壊する原因

 

高速信号(USB3.0DDRなど)を扱う設計では、信号線の配置や間隔を誤ると深刻なクロストークや反射が発生します。並行して走る信号線の距離が近すぎる場合や直角配線を行った場合、信号の歪みが発生し、画質不良や通信エラーにつながります。

解決策は明確です。高速信号は他の信号から十分な距離(線幅の3倍以上)を確保し、直角ではなく45度または曲線で配線します。さらに、データシートに基づいてインピーダンス整合を行い、差動信号は長さを揃えて平行に走らせる必要があります。

 

4. 放熱設計の不足:パワーデバイスの寿命を縮める要因

 

MOSFETや電源ICなどのパワーデバイスは、大きな電力を扱うため発熱が避けられません。放熱設計を怠ると、デバイスの温度が定格を超え、数日で故障することもあります。温度が10℃上がるごとに寿命が半減する「10℃ルール」は有名です。

設計では、デバイスの下に広いサーマルパッドを配置し、十分な数のスルーホールで背面の放熱層へ熱を逃がします。目安としては1Wあたり4個以上の0.5mm径ビアが必要です。また、温度に敏感なコンデンサやセンサーは少なくとも1cm以上離して配置します。

 

5. フットプリントの誤り:はんだ不良の直接的原因

 

最後に挙げるのは、意外にも多いフットプリント設計のミスです。部品のデータシートに記載された推奨ランド寸法を守らずに設計すると、部品が正しく実装できなかったり、はんだ不良が多発します。BGAのランド径が不揃いであれば、加熱時に半田ボールが均一に溶けず、動作不良を引き起こします。

必ずデータシートを確認し、誤差を±0.1mm以内に収めることが重要です。量産前には必ず試作を行い、実装品質を確認してから本番に移るのが安全です。

 

まとめ

 

PCB設計におけるグラウンド、電源、信号、放熱、フットプリントの5つの要素は、それぞれが独立しているようで実際には密接に関連しています。グラウンドの不備は信号干渉を増幅し、電源の不安定さは熱問題を悪化させます。熟練エンジニアはこれらを総合的に考慮し、システム全体を見渡した設計を行います。

細部への妥協は将来の大きなトラブルにつながりますが、丁寧な設計は製造-運用コストを大きく削減します。次にPCBを設計する際は、ぜひ今回紹介したチェックポイントを確認し、致命的なミスを未然に防ぎましょう。


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