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屋外用基板シールドケースにおける防食設計の特別要件

2 0 Dec 29.2025, 15:24:28

屋外で使用される PCB は、直射日光、雨水、塩害、温度変化など、非常に過酷な環境条件にさらされます。では、屋外用 PCB シールドケースの防食設計にはどのような特別な要件があるのでしょうか。屋内用 PCB シールドケースの設計と比べて、どの点が大きく異なるのでしょうか。

屋外用 PCB は、IoT 機器、防犯監視システム、スマートメーターなど幅広い分野で使用されています。これらの用途では、シールドケースに求められる防食性能は、屋内用 PCB と比べてはるかに高くなります。その理由は、屋外環境では紫外線照射、雨水による洗浄作用、塩霧腐食、高温低温の繰り返しといった複数の腐食要因が同時に作用し、シールドケースの劣化を急速に進行させるためです。

以下では、屋外用 PCB シールドケースに特有の防食設計要件と、屋内用設計との違いについて解説します。

特別要件1:耐候性を重視した材料選定

屋外用 PCB シールドケースでは、耐腐食性だけでなく耐候性も重要な評価指標となります。耐候性とは、紫外線、温度サイクル、雨水などの自然環境要因に対する材料の耐久性を指します。

屋内用 PCB では、冷間圧延鋼板と亜鉛メッキの組み合わせが採用されることがありますが、屋外用途では十分な耐久性を確保できません。屋外用では、より高い耐候性を持つ材料の選択が不可欠です。

例えば、316 ステンレス鋼は塩害や酸アルカリ腐食に強く、屋外環境に適した材料です。また、銅合金にニッケル金メッキを施した構成は、高い耐腐食性に加え、紫外線への耐性も備えています。

PCBGOGO では、沿岸地域で使用される屋外 PCB には 316 ステンレス鋼製シールドケースを推奨し、高温多湿地域では銅合金とニッケル金メッキの組み合わせを提案しています。一方、一般的な冷間圧延鋼板や亜鉛メッキ鋼板は、屋外環境では短期間で劣化するため、使用を避けるべきです。

特別要件2:表面処理は厚膜化し、防護性能を強化する

屋外用 PCB シールドケースの表面処理では、処理方法の選定だけでなく、膜厚管理が重要となります。屋外環境では腐食因子が継続的に表面を侵食するため、膜厚が不足していると防護性能が急激に低下します。

例えば、屋内用 PCB シールドケースでは、亜鉛メッキの膜厚は一般的に 5から10μm 程度ですが、屋外用途では 15から20μm が必要とされます。ニッケルメッキの場合も、屋内用途では 3から5μm が一般的であるのに対し、屋外用途では 8から10μm 程度が推奨されます。

さらに、屋外用シールドケースでは耐紫外線コーティングの追加が不可欠です。紫外線は表面被膜の分子構造を破壊し、ひび割れや剥離を引き起こします。耐紫外線コーティングを施すことで、被膜劣化を抑制し、表面処理の寿命を大幅に延ばすことが可能です。

特別要件3:高い密封性を持つ構造設計

屋外環境では、雨水や粉塵がシールドケースの隙間から侵入し、内部で腐食を引き起こすリスクが高まります。そのため、屋外用基板 シールドケースでは、構造面での高い密封性が求められます。

具体的には、シールドケースの接合部をはんだ付けによって連続的に密閉する設計が効果的です。メンテナンスのために着脱が必要な場合は、シール材とスナップフィットを組み合わせた構造が有効です。この場合、シール材には耐候性に優れたシリコーンゴムやフッ素ゴムを使用します。

また、シールドケースのエッジ部にはフランジ加工を施し、シール面積を拡大することで密封性を向上させます。さらに、必要に応じて三防コーティングを追加することで、防湿性と防食性を強化できます。ただし、屋外用途では紫外線耐性を持つ三防コーティングを選定し、被膜劣化を防ぐことが重要です。

特別要件4:腐食モニタリング機能の追加

屋外 PCB は設置後の点検や保守が難しいケースが多く、シールドケースの腐食を早期に発見することが困難です。そのため、腐食モニタリング機能の導入が有効となります。

例えば、シールドケースの重要部位に腐食センサーを設置し、腐食の進行度をリアルタイムで監視します。取得したデータを遠隔監視システムへ送信し、腐食レベルが設定値を超えた場合にアラートを発報することで、計画的な交換や保守対応が可能になります。

PCBGOGO では、屋外用 PCB の設計段階から、腐食センサーの取り付けスペースを考慮したレイアウト提案を行い、シールドケースの状態を長期的に監視できる設計をサポートしています。

まとめ

屋外用 PCB シールドケースの防食設計は、屋内用と比べて、耐候性、密封性、監視機能をより重視する必要があります。設計時には、紫外線、雨水、塩害、温度変化といった複数の腐食要因を総合的に考慮し、適切な材料選定、表面処理の最適化、構造設計の高度化、腐食モニタリング機能の追加を行うことが重要です。

これらの要件を満たすことで、屋外 PCB の長期信頼性と安定動作を確保することができます。


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