多層基板の銅バランス設計 実践ガイド
基板設計と製造に日々関わる技術担当として、エンジニアの方から次のような相談をよく受けます。
「銅バランスが重要なのは分かっているが、具体的にどう設計すればよいのか分からない」
「銅面積を調整したのに、反りが解消されないのはなぜか」
実は、銅バランス設計はそれほど難しいものではありません。いくつかの基本ポイントを押さえれば、設計段階で問題を防ぐことができます。本記事では、実務でそのまま使える形で、多層基板の銅バランス設計方法を分かりやすく解説します。初心者の方でも理解できる内容です。

設計前に押さえておくべき 銅バランスの基本要件
複雑な計算式を覚える必要はありません。以下の2点を意識するだけで十分です。
1つ目は、対称層における銅面積差を10パーセント以内に抑えることです。
例えば、6層基板であれば L1 と L6、L2 と L5、L3 と L4 が対称層になります。
2つ目は、単一層の銅被覆率を40パーセントから70パーセントの範囲に収めることです。
40パーセント未満では基材の機械強度が不足しやすく、70パーセントを超えるとラミネーション時の圧着が難しくなります。
実際の事例として、ある10層基板では L2 層の銅被覆率が65パーセントであったのに対し、対称の L9 層は40パーセントしかなく、差が25パーセントに達していました。その結果、プレス後に0.6ミリの反りが発生しました。
PCBGOGO の提案により L9 層にグリッド状の銅を追加し、被覆率を58パーセントまで引き上げたところ、差は7パーセントに抑えられ、その後の量産では反りは一切発生しませんでした。
実務で使える 銅バランス設計 3つのステップ
ステップ1 配置段階で余地を残す
多くの設計者は配線完了後に銅バランスを考え始めますが、実際には部品配置の段階で対策が可能です。
例えば、大電力部品の放熱用銅箔は、可能な限り対称層に分散して配置します。
電源層など大面積の銅を想定している場合は、対称層にも同様のスペースを確保しておくと、後工程での調整が容易になります。
一方の層に細い信号配線を集中させ、反対側を全面銅にするような構成は避けるべきです。
PCBGOGO の設計ガイドラインでは、配置段階で仮の銅エリアを想定し、占位としてマークしておくことを推奨しています。これにより、後の銅面積調整が格段に楽になります。
ステップ2 配線後に銅面積を正確に調整する
配線完了後は、次の3点を重点的に確認します。
まず、Altium Designer や PADS などの設計ツールを用いて、各層の銅被覆率を算出します。特に対称層同士の差を必ず確認します。
次に、銅面積が不足している層には、ベタ銅ではなくグリッド状の銅を使用します。
推奨するグリッド線幅は0.2から0.3ミリ、ピッチは0.8から1.2ミリです。これにより、銅面積を確保しつつ、応力集中を抑えることができます。
銅面積が過剰な場合は、信号や電源に影響しないエリアで開口を設ける、またはベタ銅をグリッドに変更して被覆率を下げます。
なお、信号層での補銅は高周波信号線から十分な距離を確保する必要があります。目安としては線幅の3倍以上の間隔が望ましいです。また、電源層やグランド層の補銅は必ずネットに接続し、孤立銅が発生しないよう注意します。
ステップ3 対称層を同時に確認する
多層基板の銅バランス設計で最も重要なのは対称性です。
例えば L1 層の銅分布を調整した場合、必ず対称となる L6 層も同時に確認し、調整後の差が10パーセント以内に収まっているかを確認します。
8層基板の実例では、L1 層にセンサー追加に伴う銅箔が増え、L8 層との差が20パーセントに達していました。この場合、L8 層の同位置にグリッド銅を追加し、さらに L1 層のベタ銅をグリッド化することで、差を8パーセントまで抑えることができました。
層数別に見る 銅バランス設計の注意点
4層から6層の一般的な基板では、表層と裏層、および内層の対称性が特に重要です。層数が少ない分、銅不均衡の影響が直接的に反りとして現れやすくなります。
4層基板の場合、L2 と L3 の電源層やグランド層の銅分布はできる限り揃える必要があります。
8層以上の高密度基板では、対称層だけでなく隣接層の銅集中にも注意が必要です。特定エリアに複数層の銅が集中すると、局所的な応力が増大します。
PCBGOGO では12層以上の基板に対して、各層の銅面積レポートの提出を推奨し、全体バランスを確認しています。
PCBGOGO による 無料 DFM チェックの活用
設計者自身では見落としやすいのが、局所的な銅偏りや孤立銅の存在です。
PCBGOGO の無料 DFM チェックでは、銅バランスに関して次の3点を重点的に確認します。
対称層の銅面積差が規定範囲内かどうか。
各層の銅被覆率が適正範囲に収まっているか。
補銅が信号品質や信頼性に悪影響を与えていないか。
昨年、16層のサーバー基板で反りが解消できず困っていたお客様がいました。DFM チェック後、内層の銅分布を最適化した結果、量産歩留まりは75パーセントから98パーセントまで改善しました。
多層基板の銅バランス設計は、配置段階での予測、配線後の調整、対称層の確認という3つのステップが基本です。特別な技術よりも、丁寧な確認が品質を左右します。
設計に不安がある場合は、量産後の手戻りを防ぐためにも、PCBGOGO の技術サポートや DFM チェックを積極的に活用することをおすすめします。