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PCB高周波信号伝送の基礎知識:初心者が必ず理解すべき重要ポイント

4 0 Dec 31.2025, 11:13:26


質問:PCBの高周波信号伝送とは何ですか。低周波信号との本質的な違いは何でしょうか。
回答:
まず基本概念を整理しましょう。
基板の高周波信号伝送とは、プリント基板上で数百MHz以上の周波数を持つ電気信号を伝送することを指します。例えば、5G通信モジュール、RFパワーアンプ基板、高速デジタルインターフェースであるUSB3.0やHDMI2.1で扱われる信号が該当します。


低周波信号との違いは、単に周波数が高いという点だけではありません。低周波信号では、導通が確保されていれば問題にならないケースがほとんどです。しかし高周波信号では、信号の波長がPCB配線長と同程度になるため、配線は単なる導線ではなく「伝送線路」として振る舞います。


例えるなら、低周波信号は田舎道を走る車のようなもので、無事に通れれば十分です。一方、高周波信号は高速道路でのレーシングカーに近く、空気抵抗や姿勢制御、車線の正確さまで考慮しなければなりません。高周波信号伝送では、インピーダンス整合、信号反射、クロストーク、電磁放射といった低周波では無視できる問題が顕在化し、これらが高周波PCB設計の主要課題となります。



質問:なぜ高周波PCB設計ではインピーダンス整合がそれほど重要なのでしょうか。整合しないと何が起こりますか。
回答:
インピーダンス整合は高周波信号伝送の生命線です。ここでいうインピーダンスとは、信号が伝送線路を通る際に感じる特性抵抗であり、直流抵抗ではなく、配線のインダクタンス、キャパシタンス、誘電体特性によって決まります。単位はΩで、代表的な値として50Ωや75Ωがあります。50Ωは主にRF信号、75Ωは映像信号で使用されます。


インピーダンスが一致しない場合、信号が負荷に到達した際に一部が反射し、反射波が発生します。この反射波が入射波と重なり合うことで、波形の歪みやオーバーシュート、アンダーシュートが生じます。


例えば無線通信モジュール用の高周波PCBでインピーダンス整合が取れていない場合、送信信号の一部が反射して戻り、通信距離や安定性が大きく低下します。場合によっては送信ICの破損につながることもあります。受信側でも整合不良があると、ノイズが多く、安定した信号を受信できません。


そのため高周波PCB設計において、インピーダンス整合は必須条件です。配線幅、銅厚、誘電体厚み、比誘電率などを計算と調整によって最適化し、信号が損失や反射なく伝送されるよう設計します。


質問:一般的なFR-4基板で高周波PCBは製作できますか。それとも専用基材が必要ですか。
回答:
結論から言うと、周波数と要求性能によります。
FR-4は最も一般的なPCB基材で、コストが低く製造実績も豊富です。ただし比誘電率は約4.2から4.8と高めで、周波数依存性があり、損失正接も比較的大きいという特徴があります。損失正接が大きいほど、信号伝送中のエネルギー損失は増加します。


信号周波数が1GHz未満で、損失や安定性にそれほど厳しい要求がない場合、例えば一般的な民生用電子機器であれば、FR-4基板でも十分対応可能です。一方、1GHzを超える高周波や、基地局アンテナ、衛星通信機器、レーダーシステムなど高性能が求められる用途では、FR-4では限界があります。


このような場合、PTFE基材、Rogersシリーズ、Taconic基材などの高周波専用材料が使用されます。これらは比誘電率が安定しており、周波数依存性が小さく、損失正接も非常に低いため、信号損失を大幅に抑え、インピーダンス制御の精度と伝送安定性を向上させることができます。


ただし高周波材料はコストが高く、加工難度も上がるため、実際の設計では性能とコストのバランスを考慮した材料選定が重要になります。


PCBの高周波信号伝送は一見複雑に見えますが、核心は「伝送線路特性」を正しく理解することです。インピーダンス整合、損失、クロストークといった基本課題を押さえ、実案件で経験を積むことで、初心者でも着実に理解を深めることができます。


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