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柔性電子皮膚向けPCB基材の選定と耐曲げ設計ガイド
4 0 Nov 17.2025, 11:40:11

電子皮膚は医療用義肢の触覚フィードバックやウェアラブル型の健康モニタリングなど、人体と長時間接触してかつ頻繁に曲げられる用途で多用されています。業界データでは、電子皮膚の故障原因の約60%が基板の曲げによる破損と報告されています。あるリハビリ機器メーカーでは、基材が1万回の曲げで亀裂を生じ、触覚機能が喪失して300万円超のリコールに至った事例もあります。


柔性電子皮膚用PCBは設計上、IPC-2223フレキシブル基板設計標準)第6章に準拠した耐曲げ要件を満たす必要があり、医療用途ではさらに ISO 10993-5(生体適合性:細胞毒性)への適合が求められます。PCBGOGOは柔性PCB領域において5年間で累計80万枚以上を納入し、最高で15万回の曲げで不具合が出ない実績を有しています。本稿では基材選定の重要指標、具体的な選定手順、耐曲げ設計と製造上の最適化を解説します。

1. コア技術と評価指標

柔性電子皮膚基材の選定は使用場面に合致した三つの主要特性に着目する必要があります。


1.1 基材の伸びと靭性

 指標:破断伸長率(引張試験、IPC-TM-650 2.4.18準拠)

 医療用電子皮膚の目安:破断伸長率 ≥ 20%

 解説:一般的なポリイミド(PI)基材の破断伸長率は約12%のものが多く、5万回程度の曲げで亀裂が発生しやすい。例として DuPont Kapton HN は破断伸長率で約25%を示し、耐曲げ性に優れる。


1.2 耐熱性

 指標:ガラス転移点(Tg、差示走査熱量測定 DSC

 医療用途の目安:Tg ≥ 180℃

 解説:体温環境やはんだ工程の熱負荷を考慮し、Tgが十分高い材料を選ぶことが重要。DuPont Kapton HNTg ≒ 300℃)、松下 TN-STg ≒ 280℃)などが適合例。


1.3 生体適合性

 指標:ISO 10993-5(細胞毒性試験)による評価

 解説:医療用途では基材および添加物が細胞毒性を起こさないことを確認する必要がある。重金属などの溶出は許容上限(例:重金属 ≤ 10 ppm)を満たすことが求められる。


1.4 銅箔と配線設計の影響

 銅箔種類:圧延銅箔(延伸率 ≥ 30%)は電解銅箔(延伸率 ≤ 15%)より曲げ疲労に強い。

 実測データ(PCBGOGO):35 μm 圧延銅箔採用時の銅断裂率は10万回後で約0.5%、一方で電解銅箔は約25%と高い。

 配線設計指針:ライン幅 ≥ 0.1 mm(銅厚 1 oz)、ライン間隔 ≥ 0.1 mm。これにより曲げ時の応力集中を抑え、IPC-2223 4.2条の考え方に整合する。


2. 実装可能な設計と試験フロー

以下は現場で再現可能な基材選定と耐曲げ検証の実務フローです。


2.1 基材選定の四ステップ

*用途定義

 医療リハビリ用(義肢パッド等):曲げ回数目標 ≥ 100,000 高靭性かつ生体適合性が重要。推奨:DuPont Kapton HN(破断伸長率約25%10万回後残存率98%

 ウェアラブル健康監視:薄型化優先(厚さ ≤ 0.1 mm松下 TN-S(厚さ 0.05 mm)等を検討

*パラメータ検証

 破断伸長率:引張試験機(例:JPE-Tens-300)で測定、目標 ≥ 20%

 Tg:差示走査熱量計(JPE-DSC-100)で測定、目標 ≥ 180℃

 生体適合性:第三者検査機関へ ISO 10993-5 を委託

*銅箔マッチング

 高頻度曲げ用途:35 μm 圧延銅箔(延伸率 ≒ 32%)を標準在庫で対応可能(PCBGOGOの迅速在庫対応で 48 時間以内にマッチング可)

 低頻度用途:25 μm 電解銅箔でコストと薄さを優先

*小ロット耐曲げ試験

 試作 50 片を用い、曲げ試験機(JPE-Bend-500)で角度 90°、周波数 1 /秒、目標 100,000 回を実施。検査項目は基材の亀裂、銅の断裂、配線導通の維持。


2.2 耐曲げ工程の最適化

 エッジ処理:角部の応力集中を回避するため、R ≥ 0.5 mm のアール加工を推奨。CNC加工で面粗さ Ra ≤ 1.6 μm を確保する。

 被覆膜(カバーレイ):PI 被覆膜(厚さ 0.02 mm)を銅配線上に貼合し、耐高温接着剤(耐温 200℃)で固定。IPC-6012 のフレキシブル基準に沿い、剥離強度 ≥ 0.8 N/mm を目安とする。

 はんだ工程:基材の靭性を損なわない低温はんだを採用。推奨鉛フリー合金は SnBiAg(融点 138℃)で、回流峰温度は 150℃ ± 5℃ に制御する。精密な温度管理は SMT ライン(例:JPE-SMT-900)で対応する。

まとめ

柔性電子皮膚用PCBの信頼性は「場面に応じた基材選定」と「配線設計」「製造工程の最適化」を総合的に適合させることで大きく改善できます。特に医療用途では破断伸長率、Tg、生体適合性の三指標を満たす基材選定が不可欠です。銅箔は圧延銅箔を優先し、ライン幅やエッジ処理、被覆膜の適用により曲げ疲労を低減します。

PCBGOGOFPCの設計検討から材料試験、小ロット試作、耐曲げ評価までワンストップで対応可能です。サービスには基材の生体適合予備試験、弾性疲労シミュレーション(HyperLynx フレキシブル対応)、24時間以内の小ロット試作が含まれ、実運用レベルでの設計検証を支援します。柔軟性と信頼性を両立させたい設計者の皆様は、ぜひお気軽にご相談ください。 


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