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アルミ基板とFR-4混載PCBにおけるCTE不整合問題の解決方法
16 0 Aug 13.2025, 11:33:00

複雑なPCB設計において、アルミ基板FR-4の混載構造は、優れた放熱性能と配線の柔軟性を兼ね備えるため注目されています。しかし、アルミ基板の熱膨張係数(CTE:約23ppm/℃)とFR-4CTE(約14ppm/℃)の大きな差異は、「時限爆弾」のような問題を内包しています。このCTE不整合により、はんだ付け後の基板反りは0.5mm/mに達し、はんだパッドの割れ率は最大8%に上ることもあります。例えば、ある新エネルギー車用の車載充電器PCBでは、はんだパッドの割れによりパワーデバイスの虚はんだが発生し、システムダウンを招いたケースも報告されています。では、このCTE不整合問題を設計段階でどのように解決できるのでしょうか。本稿では、PCB量産メーカーの実測データと改善事例を踏まえ、混載設計の重要ポイントを解説します。

 

CTE不整合がもたらす反りと割れの二重被害

温度サイクル試験(-40℃から125℃)において、アルミ基板とFR-4はそれぞれ異なる伸縮を繰り返し、その差が内部応力となって蓄積されます。PCBメーカーの有限要素解析によると、125℃時には100mm×100mmの混載基板の端部に最大20MPaもの引張応力が発生し、FR-4層が強引にアルミ基板方向に引き寄せられる形となります。この応力は温度サイクル100回後に基板の反りを初期0.1mm/mから0.5mm/mへ増加させ、組み立て時の干渉トラブルの原因となることもあります。ある工業用電源のPCBでは、反りが大きくなったことで放熱器の取り付け隙間が0.3mm縮小し、放熱効率が15%低下した例も報告されています。

 

はんだパッドはアルミ基板とFR-4をつなぐ「橋渡し」の役割を果たしますが、この部位はCTE不整合による応力集中点となりやすい箇所です。アルミ基板の激しい伸縮はパッドの根元に曲げ応力を発生させ、割れの温床となります。実際、直径0.8mmのはんだパッドは50回の熱サイクル後で割れ率が3%、100回後には8%に達し、割れの深さは銅箔厚みの半分(約18μm)にも達します。

 

CTEを均衡させる3つの設計戦略

1. 構造最適化による「硬直衝突」の緩和

アルミ基板とFR-4の接合部に「階段状」の遷移層を設計します。各階段の幅は約5mm、厚みは0.1mmずつ段階的に減少させることで、アルミの引張力を段階的に弱め、応力集中を低減します。PCBメーカーの試験では、階段状設計により端部の応力が20MPaから12MPaへと40%低減し、反り量も大幅に改善されました。ある車載PCBでこの方法を採用したところ、100回の熱サイクル後でも反り量は0.2mm/m以下に抑えられています。

 

また、アルミ基板のFR-4接近側に1mm×1mmの網目状(占有率50%)の開口を設ける「グリッド開窓」も効果的です。この手法により、アルミ基板の全体的な伸縮量が減少し、CTE18ppm/℃に低減、FR-4との差異を4ppm/℃まで縮小させました。実証データでは、熱サイクル後の応力が35%低下し、太陽光発電用インバータPCBでの割れ率も8%から2%へ大幅に改善しました。

 

2. 材料協調による「緩衝層」の活用

アルミ基板とFR-4の間に低CTEの改質エポキシ接着フィルム(CTE10ppm/℃、通常は約16ppm/℃)を挟み、「緩衝帯」を形成する方法も有効です。量産メーカーの比較試験では、この構造により界面の剥離強度が1.5N/cmから2.5N/cmに向上し、分層耐性が約67%増強されました。サーバー電源用PCBでは、200回の熱サイクルをクリアする実績があります。

 

さらに、重なり部のFR-4ガラスクロス層を2層から4層に増やして局所的に強化する方法もあります。これによりFR-4の引張強度が200MPaから300MPaにアップし、応力15MPaまで塑性変形を起こさず耐えられるようになりました。医療機器用PCBでは、この設計変更によりパッド周囲の割れ率がゼロになった事例も報告されています。

 

3. はんだパッド強化による「疲労耐性」向上

はんだパッドと配線の接続部を「涙滴形状」にすることで、応力が集中しやすい角部を緩和し、パッドの疲労寿命を延ばします。半径0.2mmの丸みを持たせた設計により、応力分散効果が高まり、100回の熱サイクル後でも割れが発生しません。ある民生用電子機器のUSBポートでは、抜き差し試験の耐久回数が5000回から10000回に倍増しました。

 

また、はんだパッド表面に5μmのニッケルめっきを施すことで、CTEFR-4に近い約13ppm/℃となり、界面応力を低減します。実験では、ニッケルめっきパッドの割れ発生時間が通常パッドより50%遅延し、割れの拡大速度も60%減少しました。5G基地局用PCBの例では、この加工により3年間の信頼性基準を満たす結果となっています。

 

PCB量産メーカーによるプロセス管理のポイント

製造プロセス面では、段階的なプレス温度制御が有効です。まず120℃でアルミ基板と接着フィルムを1MPaで予圧し、その後180℃FR-42MPaで圧着することで熱応力を緩和します。これにより初期反り量が0.15mm/mから0.08mm/mに半減した実績があります。

 

また、X線検査によるはんだパッドとアルミ基板の密着状態の抜き取り検査も欠かせません。空洞率を1%未満に管理し、不良品の早期排除を徹底することで、後工程のはんだ付け歩留まりが15%向上しています。

 

さらに、150℃4時間の熱処理による事前の熱劣化処理を行い、内部応力を部分的に解放しておくことで、使用時の反り増加を約30%抑制できます。自動車電子部品の事例では、これによりアフターサービスの故障率が2%から0.5%に減少しました。

 

アルミ基板とFR-4の混載設計は、「構造緩衝」「材料協調」「疲労耐性強化」という三位一体のアプローチでCTE不整合問題を解決します。実際の量産現場での取り組みでは、これらの工夫により反りを0.2mm/m以内に抑え、はんだパッド割れ率を1%未満に低減しています。設計エンジニアはシミュレーション解析と量産メーカーの製造技術を組み合わせ、必要に応じて試作検証を行うことで、理論と実践を両立させた最適な混載PCB設計を実現できます。

 

このように、アルミ基板とFR-4混載PCBCTE問題に対する技術的対策は、多くの業界実績に裏打ちされており、特に自動車、通信、医療、産業機器分野での信頼性向上に貢献しています。PCB設計の際には、ぜひ本稿のポイントを参考にしてください。


--PCBGOGO


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