SMTの選択的コーティング特殊工法とは何か
SMT実装後のPCBに対して「選択的コーティングが必要」と言われることがありますが、これは一体どのような特殊工法なのでしょうか。また、PCBの実使用環境において、どのような課題を解決できるのでしょうか。

選択的コーティングとは
選択的コーティングとは、SMT実装後の後工程において、専用装置を用い、PCB上の指定されたエリアのみに保護材料を精密に塗布する特殊工法です。一般的には三防コーティング材を使用し、必要な部位のみを保護し、不要な部位には塗布しません。
この工法の最大の目的は、重要な電子部品やはんだ接合部を保護し、屋外機器、産業機器、車載電子機器などの過酷な使用環境下でもPCBの信頼性を確保することです。いわば、PCBに必要な部分だけ防護服を着せる工程と言えます。
PCBが直面する使用環境の課題
実際の使用環境では、PCBはさまざまな外的ストレスにさらされます。例えば屋外機器では雨水や湿気、高温環境にさらされ、産業機器では粉塵、油分、腐食性ガスの影響を受けます。車載電子機器では高温と低温の繰り返しや振動、衝撃が常態化しています。
これらの要因は、はんだ部の酸化、リード端子の腐食、短絡や断線といった不具合を引き起こし、製品寿命の低下や故障につながります。
従来の全面コーティングの問題点
従来の三防コーティングは、PCB全体をコーティング材に浸漬または全面塗布する方式が一般的でした。防護性能自体は高いものの、大きな課題が2つあります。
1つ目は、テストポイント、コネクタ端子、スイッチ部など、本来露出が必要な部位まで覆ってしまい、後工程の検査や組立ができなくなる点です。2つ目は、必要以上に材料を使用するため、コーティング材の消費量が増え、製造コストが上昇する点です。
選択的コーティングが解決するポイント
選択的コーティングは、こうした課題を根本から解決するSMTの特殊工法です。その最大の特長は「高精度で制御可能」であることです。
工程は以下のように進められます。まずGerberデータをもとにプログラムを作成し、塗布が必要な部位と不要な部位を明確に定義します。次に、センサー感知面など特に敏感な箇所には、耐熱テープや専用治具によるマスキングを行います。その後、装置のスプレーノズルにより指定エリアのみに均一な膜厚でコーティングを行います。膜厚は一般的に20から50μm程度に制御されます。最後に、加熱またはUV照射による硬化工程を経て、安定した保護膜を形成します。
実際に解決できる3つの信頼性課題
選択的コーティングにより、以下のような実用上の問題が大きく改善されます。
まず防腐食性能です。三防コーティング材は空気や水分、腐食性ガスを遮断し、はんだ部やリード端子の酸化や錆を防止します。化学工場や沿岸地域などの環境で特に有効です。
次に防塵、防油性能です。保護膜が粉塵や油分の付着を防ぎ、回路間の短絡リスクを低減します。産業機器向けPCBにおいて重要なポイントです。
さらに耐温度変化性能です。三防コーティング材には一定の柔軟性があり、温度変化による基板と部品の膨張差を緩和します。これにより、はんだクラックの発生リスクを低減し、車載電子機器の信頼性向上に貢献します。
PCBGOGOの選択的コーティング対応
PCBGOGOでは、使用環境に応じて最適な三防コーティング材を提案しています。アクリル系は一般的な常温環境に適しており、ポリウレタン系は耐高低温性能に優れ、シリコーン系は耐薬品性や耐腐食性に優れています。
また、選択的コーティング装置の位置決め精度は±0.1mmを実現しており、重要な露出部位への誤塗布を防止します。
まとめ
選択的コーティングの本質的な価値は「必要な部分だけを正確に保護し、検査や組立工程に影響を与えない」点にあります。過酷な環境下で使用されるPCBの信頼性を高めるために欠かせない、SMTにおける代表的な特殊工法の1つと言えるでしょう。