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FPCにおける導電インクの選定と曲げ信頼性設計のポイント
13 0 Nov 19.2025, 17:49:24


1. はじめに

ウェアラブル端末や折りたたみスマートフォンの普及に伴い、FPCは繰り返しの曲げ負荷に耐えられる信頼性がこれまで以上に求められています。例えば、スマートウォッチのストラップ内蔵基板では10万回を超える曲げ試験が一般的です。

FPCの電気特性を支える導電インクは、製品寿命に直結する重要要素です。業界では、FPCの不具合の約45%が導電インクの劣化に起因するとされ、一般品インクの採用によって1万回の曲げで導電性が大幅に低下し、数百万円規模のリコールにつながった事例も報告されています。導電インクはIPC-4921(導電インク規格)が定める柔性用途向け要件を満たす必要があり、適切な選定と評価が不可欠です。


PCBGOGOはFPC向け導電インク技術に5年以上取り組み、累計600万枚以上の製品を量産してきました。本記事では、導電インク選定の要点と曲げ信頼性を確保するための設計ポイントをわかりやすくまとめています。

 


2. 導電インク選定における主要パラメータ

柔性基板に使用する導電インクでは、以下の三つの特性が特に重要です。


(1)方形抵抗(Sheet Resistance)

柔性用途では、乾燥膜厚25μmで方形抵抗が0.05Ω/□以下であることが望ましいとされています。方形抵抗が高いインクは電流損失が大きく、PCBGOGOの評価では、0.1Ω/□を超えるインクは5万回の曲げで導電性が30%低下する傾向が確認されています。


(2)密着性

IPC-TM-650 2.4.30(テープ剥離試験)では5B評価が柔性用途の基準とされています。密着性が不十分なインクは、3万回程度の曲げで剥離やクラックが発生しやすくなります。


(3)曲げ寿命

一般的なFPCでは、曲げ角度180度-曲げ半径1mmで10万回の繰り返し試験を行い、抵抗値の変化率が10%以内であることが求められます。この基準はGB/T 24369.2(柔性回路試験標準)に準拠しています。


なお、銀系インクの代表例であるDuPont 7713は方形抵抗が低く、密着性も高く、曲げ10万回の後でも抵抗変化が小さいことから、高信頼性が求められるスマートウォッチや高精度センサー用途に適しています。一方、日立A-110のような銅系インクはコスト面で優れ、曲げ性能とのバランスも良いため、コスト重視のFPCに広く採用されています。

 


3. 実践的な選定/検証の進め方

3.1 導電インク選定の流れ

まず、用途ごとに優先すべき特性を明確にします。
*高い曲げ寿命が求められるスマートウォッチ基板では、抵抗変化が小さいDuPont 7713が適しています。
*コストを重視するLEDライト用柔性基板では、日立A-110がよく採用されています。

次に、サンプルを用いて主要パラメータを実測します。方形抵抗は四探針測定器、密着性は3Mテープを用いた180度剥離試験、曲げ寿命は専用の曲げ試験機で評価します。


最後に、インクと基材(PIフィルムなど)の相性を確認します。インクごとに固化温度や時間が異なるため、生産ラインでの条件管理が重要です。例えば、DuPont 7713は120℃で30分、日立A-110は100℃で20分の固化条件が推奨されています。

 

3.2 曲げ信頼性を高めるための設計と工法

曲げ信頼性を向上させるには、インク選定だけでなく、基板設計や加工工程の最適化も重要です。

(1)膜厚管理

乾燥膜厚は25μm前後が最も安定します。膜厚が薄すぎるとクラックが発生しやすく、厚すぎると剥離につながるため、製造工程での管理が必須です。

(2)パターンエッジの処理

導電パターンの角部は、応力集中を避けるため丸め処理(R0.1mm以上)が推奨されます。CAD設計段階で自動補正を行うと効率的です。

(3)カバーレイによる保護

導電インク層の上にPIカバーレイを積層し、エポキシで接着することで曲げ時の応力を分散できます。この工程はIPC-6013の要求にも適合しており、量産基板で一般的に採用されています。

 


まとめ

FPC向け導電インクの選定では、方形抵抗--密着性--曲げ寿命の三つを中心に評価し、用途要件に合わせて最適な材料を選ぶことが重要です。また、膜厚管理、パターン設計、カバーレイ積層といった工法の最適化も、長期的な信頼性確保には欠かせません。

 

PCBGOGOは、導電インクの選定から工法最適化、信頼性試験まで一貫してサポートできる生産体制を整えており、IPC/TM-650準拠の試験設備や各種インクに対応したFPCラインを保有しています。FPCに関するご相談や試作/量産のご依頼がございましたら、ぜひPCBGOGOまでお気軽にお問い合わせください。

 


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