
はんだ付けは、プリント基板(PCB)組立工程において最も重要なステップの一つであり、電子部品を基板にしっかりと電気的に接続する役割を果たします。使用するはんだの種類、つまり鉛入りはんだと鉛フリーはんだの選択は、製品の信頼性、製造コスト、環境への安全性、国際的な規制遵守に直接影響を及ぼします。
本記事では、鉛入りはんだと鉛フリーはんだの基本的な違い、それぞれの利点と欠点、環境への影響、基板製造-設計における重要な知識について詳しく解説いたします。
鉛入りはんだとは何ですか?
鉛入りはんだは、主にスズ(Sn)と鉛(Pb)で構成される伝統的なはんだ合金です。最も一般的な組成はSn63/Pb37(スズ63%、鉛37%)で、これは共晶合金と呼ばれ、183°Cの一定温度で液体に変化し、滑らかで効率的なはんだ付けプロセスを実現します。鉛入りはんだは、優れたぬれ性、低融点、リワークのしやすさなどから、数十年にわたって広く使用されてきました。
鉛フリーはんだとは何ですか?
鉛フリーはんだは、鉛を含まないはんだ合金であり、一般的にスズと銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの金属で構成されます。代表的な鉛フリーはんだにはSAC305(スズ96.5%、銀3.0%、銅0.5%)があります。鉛フリーはんだの開発は、特に欧州連合のRoHS指令に代表される、電子機器における鉛の使用を禁止する環境規制に対応するために進められました。
鉛入りはんだの利点と欠点
鉛入りはんだは、低い融点により部品への熱ストレスを軽減し、優れたぬれ性により信頼性の高いはんだ接合を実現します。また、手作業でのはんだ付けやリワークがしやすく、光沢のあるはんだ面により目視検査が容易です。加えて、価格も比較的安価で入手しやすいというメリットがあります。
一方で、鉛は人体および環境に有害な毒性を持つ物質であり、製品の廃棄やリサイクル時に複雑な対応が必要です。RoHSなどの規制により、鉛入りはんだはほとんどの消費者製品で使用が禁止されています。
鉛フリーはんだの利点と欠点
鉛フリーはんだは、環境に優しくRoHSに準拠しており、作業者や最終ユーザーにとっても安全です。また、自動車や産業機器などの高温環境にも適しており、現代の製造プロセスに最適です。
しかしながら、加工温度が高いため、熱に弱い部品が損傷する可能性があり、接合部もやや脆くなります。さらに、銀などの希少金属を使用するためコストが高く、リワークや検査にもやや手間がかかります。
環境および健康への影響
鉛は強力な神経毒であり、長期的な暴露は健康に重大なリスクをもたらします。製造現場では、鉛入りはんだの煙や粉塵が危険となり得ます。電子製品の不適切な廃棄により、鉛が土壌や地下水を汚染する可能性もあります。
鉛フリーはんだの導入は、有害廃棄物の削減、作業者の安全確保、そして生態系の保護を目的としており、RoHS、WEEE、中国RoHSなどの規制が、世界的な鉛フリー化を強力に推進しています。
その他の注意点
鉛フリーはんだは、高温プロファイルを必要とするため、PCB設計時には部品の耐熱性を考慮する必要があります。また、一部の旧型部品は鉛入りはんだでのはんだ付けを前提としており、両者の互換性に注意が必要です。
まれに鉛入りと鉛フリーを併用する混合組立が行われる場合もありますが、信頼性の観点から一般には推奨されません。さらに、鉛フリーはんだは酸化しやすいため、冷暗所での保管が不可欠です。加えて、鉛フリーのはんだ接合は光沢が少ないため、自動光学検査(AOI)システムの設定調整が必要になる場合があります。
結局どちらを選ぶべきか?
鉛入りはんだは、取り扱いが容易で、低コストかつ信頼性の高い接合が可能であることから、多くの産業用途で今でも使用されています。
しかし、国際的な規制の強化や環境保護への意識の高まりにより、鉛フリーはんだが今後の主流になると考えられます。特に、自社製品がRoHS適合を求められる場合や、ESG企業を目指す際には、鉛フリーはんだを選択すべきです。
はんだの選択は単なる技術的判断ではなく、規制遵守、持続可能性、製品ライフサイクル全体に関わる戦略的判断でもあります。両者の違いを理解し、目的に応じた最適なはんだを選択することが、PCBの高品質な製造と設計には不可欠であるといえます。