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基板テスト検証技術:物理層における品質保証
22 0 Sep 26.2025, 11:26:43

PCB(プリント基板)の設計品質を最終的に確認する工程が「信号インテグリティテスト」です。物理層での測定を通じて、実際のPCBが設計通りに信号を伝送できるかを評価します。テスト手法は大きく「時間領域測定(眼図、TDR)」と「周波数領域測定(Sパラメータ)」に分けられ、それぞれ信号の時間特性と周波数特性を示します。IEEE 1149.4やIPC-TM-650などの標準規格に基づいて試験を行うことで、測定の正確性と比較可能性を担保できます。

眼図テスト:高速信号品質の基本評価

眼図解析は、高速信号伝送の健全性を評価する代表的な方法です。一般的に、信号レートの3倍以上の帯域幅を持つオシロスコープ(例:16Gbps信号には48GHzオシロスコープ)が用いられ、100Ω差動入力のプローブと組み合わせて測定されます。

測定手順は、信号のプロービング、トリガー設定(エッジトリガーやクロックリカバリ)、時基調整(2?5UI)そして統計解析(1000UI以上のサンプリング)で構成されます。評価基準としては、眼の高さがデバイスの最小入力振幅の80%以上、眼の幅がデータシートに規定されたセットアップ+ホールド時間を上回ること、交差点のずれが0.5UI±10%以内であることが求められます。

時間領域反射測定(TDR):阻抗不連続の特定

TDRは、伝送路にステップ信号(立ち上がり時間50ps)を注入し、反射波形からインピーダンス変化を解析する技術です。反射が正の場合は阻抗増加、負の場合はインピーダンス減少を示します。

TDRによって検出できる典型的な問題には、コネクタ部のインピーダンス変化(10-30Ωのジャンプ)、ビアによる寄生インダクタンスによるスパイク、配線の直角曲がりによる5-10Ωの変化などがあります。さらに、TDT(時間領域透過測定)を組み合わせることで、伝送損失や遅延特性を評価し、シミュレーションモデルの精度向上に活用できます。

Sパラメータ測定:周波数特性の分析

ベクトルネットワークアナライザ(VNA)を用いたSパラメータ測定は、信号の周波数特性を明らかにします。

  • S11:反射に関連するパラメータ(リターンロス)

  • S21:伝送特性を示すパラメータ(挿入損失)

高速バックプレーン設計においては、ナイキスト周波数でS11が-15dB以下、S21が-6dB以上であることが推奨されます。差動信号ではSdd21(差動伝送損失)とScc21(共通モード抑制比)も重要で、良好な設計ではScc21がSdd21より20dB以上低くなる必要があります。これにより共通モードノイズの抑制性能を確認できます。

テストポイント設計と校正の重要性

テストポイントの設計は測定精度に直結します。高速信号の場合、接地共面構造を用いて反射を抑制し、信号ラインとの接続は漸次的に変化させることでインピーダンスの急変を防ぎます。プローブの着地点直径は10mil以上、隣接間隔は50mil以上が望ましく、差動信号ではテストポイント間隔を配線間隔と一致させる必要があります。

また、測定前には校正を行います。オープン校正で寄生容量を補正し、ショート校正で寄生成分を除去、負荷校正で参照阻抗を正確に設定することが必須です。

実測データとシミュレーションの比較分析

測定データとシミュレーション結果の比較は、基板設計の妥当性を判断する上で不可欠です。例えば、実測した眼高がシミュレーションより20%低下している場合、モデルの損失要素の設定不足、測定環境のノイズ、製造誤差(配線幅や誘電体厚さのばらつき)などを確認します。

繰り返しのモデル修正と実測比較により、シミュレーションと実測の差異を10%以内に抑えることが可能になり、今後の設計に活用できる信頼性の高いモデルライブラリを構築できます。

まとめ

基板テスト検証技術は、信号の時間領域と周波数領域の両面から設計品質を保証する重要な工程です。眼図、TDR、Sパラメータといった測定を適切に行い、シミュレーションとの比較分析を繰り返すことで、PCBの信号品質と信頼性を高い水準で確保することができます。


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