多層基板の銅バランスを量産工程でどう管理するか
反り-層間剥離を防ぐために 生産責任者必読の実践ポイント
設計段階では銅バランスを十分に考慮していたにもかかわらず、量産後に反りや層間剥離が発生する。
このようなケースは決して珍しくありません。
実際、銅バランスは設計だけの問題ではなく、生産工程のあらゆるプロセスが最終品質に影響します。本記事では、生産現場の視点から、設計で意図した銅バランスをいかに実製品へ確実に反映させるかについて解説します。

生産側の本質的な課題
設計上の銅バランスを製品として再現するために
設計データ上では理想的な銅分布であっても、ラミネーション温度のばらつきや、基材前処理の不十分さがあると、銅バランス由来の応力が増幅され、不良につながります。
PCBGOGO の生産現場での経験から言えることは、生産工程における銅バランス管理の要点は以下の3点に集約されます。
工程内の変動要因を減らすこと。
各層に均一な力を加えること。
温度を正確に制御すること。
生産全工程における 銅バランス管理の実践ポイント
基材前処理
応力を溜めないための下準備
多層基板に使用される FR-4 や高 TG 材料は、元々内部応力を有しています。この前処理が不十分なままプレス工程に入ると、銅バランス由来の応力と重なり、不良が顕在化しやすくなります。
PCBGOGO では以下の工程管理を行っています。
基材裁断後、120度の恒温炉で4時間ベーキングを行い、内部応力を十分に除去します。
裁断寸法は誤差±0.1ミリ以内に管理し、積層時のズレによる局所的な銅偏りを防止します。
異なるロットやメーカーの基材は混用せず、熱膨張係数の差による応力リスクを回避します。
実際に、複数メーカーの基材を混在使用していた案件では、銅バランス設計が基準内であっても反り率が5パーセントを超えました。同一ロット材に切り替えたことで問題は解消しています。
積層および位置決め
対称層を正確に合わせる
積層時に対称層がわずかでもズレると、設計上の銅バランスは実製品では成立しません。
PCBGOGO では以下を厳守しています。
位置決め精度±0.02ミリ以内の高精度ピンを使用します。
積層順序は設計データ通りとし、特に対称層の表裏取り違えを防止します。
積層後、圧力0.5MPa、温度80度で予備プレスを行い、各層を安定させてから本圧着へ移行します。
ラミネーション工程
温度と圧力が銅バランスの成否を決める
ラミネーションは、銅バランスを実体化する最重要工程です。温度や圧力のばらつきは、層間応力の不均一を招きます。
PCBGOGO で採用している代表的な条件は以下の通りです。
昇温速度は5度毎分とし、急激な加熱による局所応力を防ぎます。
ピーク温度は材料に応じて調整し、FR-4 は170度から180度、高 TG 材は180度から200度とします。
保温時間は90分から120分確保し、樹脂の完全硬化を促します。
圧力は1.5から2.0MPaを均一に付加します。
冷却は毎分3度で自然冷却とし、新たな内部応力の発生を防止します。
過去に、外注先が生産効率を優先して昇温速度を10度毎分に設定した結果、6層基板で0.7ミリを超える反りが発生しました。条件を上記標準に戻すことで、反りは0.2ミリ以内に収まりました。
後工程
二次応力を抑える加工管理
ラミネーション後の外形加工や穴あけも、銅バランスの安定性に影響します。
外形加工は CNC ルーターを使用し、切削速度は50ミリ毎秒以内に制限します。
ドリル加工は段階加工とし、下穴後に仕上げ穴を開けることで、穴周辺の応力集中を抑制します。
不良発生時の 即時切り分け手順
量産中に反りや層間剥離が発生した場合、以下の順で確認すると効率的です。
まず設計を確認し、対称層の銅面積差が10パーセント以内か、孤立銅が存在しないかを確認します。
次に工程条件を見直し、ラミネーション温度や圧力カーブに変動がないかを確認します。
最後に基材ロットと前処理条件が規定通りであるかを確認します。
PCBGOGO の生産現場では、銅バランス異常に対する迅速対応フローを構築しており、不良発生から2時間以内に原因特定を行い、量産損失を最小限に抑えています。
多層基板の銅バランスは、設計と生産の両輪で成立します。
設計で土台を固め、生産工程でそれを正確に再現することが、安定した量産品質につながります。
基材前処理、積層、ラミネーション、後加工の各工程を確実に管理することで、銅バランス設計の効果を最大限に引き出すことが可能です。
生産現場で解決が難しい課題がある場合は、PCBGOGO の専門プロセスチームが、案件ごとの最適なソリューションをご提案いたします。