PCB配線はなぜ直角にしてはいけないのか?その理由を3つで解説
PCB設計を学び始めたとき、多くの人が最初に教わる基本ルールの一つが「配線は直角にしないこと」です。優れた電子エンジニアほど、PCB設計では直角配線を避けると言われることもあります。
では、PCBは本当に直角配線をしてはいけないのでしょうか。
結論から言うと、直角配線が可能かどうかは回路の周波数によって決まります。

直角配線が可能かどうかは周波数次第
基板では、すべての回路で直角配線が禁止されているわけではありません。
低周波回路では直角配線は問題にならない場合が多く、高周波回路では避けるべきというのが正確な理解です。
直角配線では、配線の曲がり角部分で実効的な線幅が増加します。理論上、この線幅は通常の約1.414倍になります。
線幅が変化すると特性インピーダンスが低下し、信号反射が発生します。さらに、90度の角部では寄生容量、寄生インダクタンス、先端部でのEMI(電磁放射)も発生します。
低周波回路の場合
低周波信号では、信号の波長が配線長に比べて非常に長いため、配線を「短い導線」とみなすことができます。
そのため、インピーダンス不連続による反射はほとんど無視でき、直角配線による寄生容量や寄生インダクタンス、EMIの影響も極めて小さくなります。
このため、低周波回路では直角配線が大きな問題になることはほとんどありません。
高周波回路の場合
一方、高周波回路では事情がまったく異なります。
直角配線によるわずかなインピーダンス不連続が拡大され、信号反射や伝送遅延が顕著になります。
タイミングマージンが確保できない場合、システム全体が正常に動作しなくなる可能性もあります。
高周波信号では、損失を極力抑えることが重要です。90度の角で生じるインピーダンス不連続や寄生容量は、位相誤差や振幅誤差、入出力ミスマッチ、さらには寄生結合を引き起こし、結果として回路性能を大きく劣化させます。
数値で見る直角配線の影響
高速-高周波PCB設計では、インピーダンス変動を±10%以内に抑えることが一般的です。
例えば、特性インピーダンスを50Ωに設定した場合、許容範囲は45Ωから55Ωとなります。
6層基板のA-1080スタックアップを例にすると、TOP層信号線をL2層基準で50Ωに設計した場合、必要な線幅は約3.97milです。
しかし、配線途中に直角が入ると、その部分の線幅は3.97×1.414=約5.61milになります。
この線幅で計算すると、インピーダンスは約42.63Ωとなり、目標の50Ωから大きく外れます。
このようなズレは、高速?高周波信号において信号歪みを引き起こす原因となります。
なお、直角配線だけでなく、鋭角配線や鈍角配線でもインピーダンス変化は発生します。
理論的に最も理想的なのは線幅が変化しない円弧配線です。ただし、実務では45度または135度の配線が一般的で、円弧配線はRFや無損失伝送が求められる特殊なケースで使用されます。
理由1:直角配線はPCBエッチング不良を招く
PCB製造工程の観点から見ると、鋭角配線は絶対に避ける必要があり、直角配線も可能な限り回避するのが望ましいとされています。
配線が鋭角で交差すると、「アシッドトラップ(acid traps)」と呼ばれる現象が発生します。
エッチング工程において薬液が角部に溜まりやすくなり、過剰腐食が起こることで配線が細くなったり、断線に近い状態になるリスクがあります。
90度の直角配線でも、程度は小さいものの薬液が付着しやすく、腐食リスクはゼロではありません。
そのため、製造面から見ても、直角配線は避け、円弧または鈍角配線を採用するのが安全です。
理由2:直角配線は美しくない
エンジニアリングの美学という観点でも、直角配線はあまり好まれません。
整った45度配線や滑らかな配線は、設計品質が高いPCBの象徴とも言えます。
現在のPCBレイアウトでは、高速信号かどうかに関わらず、特別な理由がない限り90度配線を避けるのが一般的な設計習慣です。
大電流配線では、配線の代わりに銅ポアを使用することもありますが、その場合でも銅ポアの角は2つの45度角で構成し、90度を避けます。
これにより、見た目が美しくなるだけでなく、EMIリスクの低減にもつながります。
まとめ
PCBにおける直角配線は、低周波回路では致命的な問題になることは少ないものの、
製造プロセスや高速-高周波化が進む現在の電子回路設計では、できる限り避けるべき設計手法です。
特に10GHz以上のRF設計領域では、直角配線は信号品質に悪影響を及ぼすため、明確に回避対象となります。
そのため、PCB設計では45度配線や円弧配線を基本とし、インピーダンス変動を最小限に抑えることが重要です。
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