金端子(ゴールドフィンガー)は、プリント基板と外部デバイスを接続するための重要なインターフェースであり、表面の金めっき層によって低接触抵抗-高耐摩耗性-耐食性を実現します。ノートPCのメモリスロット、産業用制御カード、サーバーインターフェースなど幅広い分野で使用されており、その製造精度とめっき選択は導通性能や寿命(通常は1000回以上の抜き差しに対応)を大きく左右します。金端子の基本的な製造プロセスとめっき特性を正しく理解することが、高品質なコネクタを実現するための前提条件となります。

金端子の基本構造と設計パラメータ
金端子の設計では、導電性、耐摩耗性、挿抜性のバランスが求められます。代表的な規格はIPC-2221に準拠し、以下の点が重要です。
まず寸法面では、幅は0.635mmや1.27mmが一般的で、DDR5メモリに用いられる0.8mmなど、対応するコネクタに合わせて設計されます。許容誤差は±0.02mm以内でなければ接触不良の原因となります。長さは通常10?20mmで、実効接触長は8mm以上を確保することが安定導通の条件です。ピッチは0.635mmや1.27mmが多く、高密度設計では0.3mmまで可能であり、誤差は±0.01mm以内に抑える必要があります。
端部の設計も重要です。先端には45度の面取り(長さ0.5?1mm)が施され、スムーズな挿抜を実現し、コネクタの損傷を防ぎます。多層基板では段差構造を設け、各層のめっきが連続し、断裂のないように加工されます。
金端子の製造プロセス
金端子の製造は「前処理―めっき―後処理」という3つの工程で構成されます。
前処理では、まず脱脂によって銅箔表面の油脂を除去します。アルカリ性溶液により50?60℃で数分間処理し、その後の噴射洗浄で残留物を徹底的に取り除きます。続いて酸洗で酸化膜を溶解除去し、新鮮な銅表面を露出させます。その後、過硫酸アンモニウム溶液で微細な粗化処理を施し、表面に0.3?0.5μmの凹凸を形成することで、めっき層との密着性を高めます。
めっき工程では、大きく分けて「化学めっき(金の無電解めっき)」と「電解めっき」があります。
化学めっきは還元反応によって銅表面に均一な金層を形成します。温度は70?80℃、pHは8?9の条件で行われ、膜厚は0.05?0.1μmと薄く、導電性に優れます。ただし耐摩耗性は低く、500回以下の抜き差しを想定した用途、例えば民生用電子機器のインターフェースに適しています。
電解めっきは直流電流によって金イオンを析出させ、純金層(ソフトゴールド)または合金層(ハードゴールド)を形成します。ソフトゴールドは純度99.9%以上で、厚さ0.1?0.5μm、導電性に優れ、高周波信号(1GHz以上)の伝送に最適です。一方ハードゴールドはニッケルやコバルトを添加して硬度を120?200HVまで高め、膜厚も1?5μmと厚いため、5000回以上の高頻度な挿抜が求められる産業用制御やサーバー用途に多く採用されます。
後処理では、超純水による多段階洗浄で残留めっき液を除去し、熱風乾燥で水分を0.1%以下に抑えます。その後、X線蛍光膜厚計や金属顕微鏡でめっき層の厚みや欠陥を検査し、ピンホールやクラックがないことを確認します。
めっき選択の判断基準
金端子のめっき方式を選択する際には、使用環境と要求特性を考慮することが重要です。
まず挿抜回数が少ない場合(500回以下)は化学めっきやソフトゴールドが適しており、コストも抑えられます。1000回以上の耐久性が必要な場合はハードゴールドが必須です。次に使用環境ですが、湿度が高い場所や腐食性の雰囲気下では耐食性に優れるハードゴールドが推奨されます。信号特性では、1GHzを超える高周波では低抵抗のソフトゴールド、100MHz以下の低周波では耐摩耗性の高いハードゴールドが有効です。最後にコスト面では、化学めっきが最も安価で、ソフトゴールドはその約2倍、ハードゴールドはさらに高価となります。したがって、民生機器には化学めっき、信頼性重視の産業-通信機器にはハードゴールドという選択が一般的です。
このように、金端子の設計とめっき選択は、性能、耐久性、コストのバランスを取るための重要な工程です。適切な工芸と材料選定を行うことで、安定した接続と長寿命を実現し、多様な応用分野に対応することができます。