多層基板の銅バランスに関する代表的な誤解を徹底解説
基板技術運用の現場では、「感覚的な判断」による銅バランス不良を数多く見てきました。「銅面積はだいたい同じだから問題ない」「とりあえず銅を追加すれば改善するはず」「4層基板なら銅バランスは不要」など、一見もっともらしい考え方が、実際には量産歩留まりを大きく低下させています。本記事では、よくある銅バランスの誤解を一つずつ検証し、設計段階で確実に回避するための正しい考え方を解説します。

誤解1
「銅面積はだいたい同じで十分。厳密に管理する必要はない」
多くの設計者が目視で「ほぼ同じ」と判断したり、「20パーセント程度の差なら問題ない」と考えがちですが、実際の製造では銅面積差が15パーセントを超えると、反りのリスクは急激に増加します。
PCBGOGOが実施した6層基板の検証では、対称層の銅面積差が10パーセントの場合、反り発生率は0.1パーセントでしたが、15パーセントでは0.3パーセントに上昇し、20パーセントでは0.8パーセントに達しました。これは業界許容値である0.3mmを大きく超える結果です。
正しい対策
設計ソフトで銅面積を数値で正確に算出し、対称層の差は10パーセント以内に制御することが必須です。時間がない場合は、PCBGOGOの無料DFMレビューを活用することで、自動的に銅面積差を算出できます。
誤解2
「銅を多く追加すればするほどバランスは良くなる」
銅バランスが悪いからといって、信号層に広範囲のベタ銅を追加すると、かえって新たな問題を引き起こします。
ベタ銅は放熱性を悪化させ、リフロー時の未はんだを誘発します。
高周波信号層では寄生容量が増加し、信号品質が低下します。
孤立したベタ銅は基材との密着性が低く、プレス後にブリスターや層間剥離が発生しやすくなります。
実際に、ある4層基板では信号層に10mm×10mmのベタ銅を追加した結果、量産時に30パーセントの基板で層間剥離が発生しました。後にグリッド銅に変更し、GNDに接続したことで問題は完全に解消されました。
正しい対策
銅追加は「適量かつ合理的」に行う必要があります。
優先的にグリッド銅を採用し、格子ピッチは0.8mmから1.2mmを目安とします。
補助銅は電源層またはGNDと接続し、孤立させないことが重要です。
また、高周波信号や感度の高い部品周辺は避け、電気特性への影響を抑えます。
誤解3
「4層基板なら銅バランスは不要」
4層基板は構造が簡単なため、銅バランスを軽視されがちですが、実際には層数が少ない分、銅不均衡の影響がより直接的に現れます。
トップ層とボトム層の銅面積差が大きい場合、プレス後に反りが発生しやすく、挿入実装やはんだ付け工程にも悪影響を与えます。
PCBGOGOの生産データでは、銅バランス不良による不良のうち、4層基板が約25パーセントを占めており、6層以上の高密度基板に次ぐ割合となっています。
正しい対策
層数に関係なく、多層基板では必ず銅バランスを考慮します。
4層基板では特にトップ層とボトム層、L2とL3の対称性を重視し、銅面積差は10パーセント以内に抑える必要があります。
誤解4
「銅面積さえ同じなら、分布は気にしなくてよい」
これは最も見落とされやすいポイントです。
例えば、トップ層とボトム層の銅面積がそれぞれ50パーセントであっても、銅が一方は左側に集中し、もう一方は右側に集中している場合、プレス時の局所応力が不均一になり、反りや部分変形が発生します。
正しい対策
銅バランスでは、面積だけでなく分布の均一性も重要です。
設計時には銅分布ヒートマップ機能を活用し、特定エリアへの集中を避け、基板全体に均等に分散させることが望まれます。
誤解5
「製造工程で銅不均衡は補正できる」
設計段階で銅バランスが不十分でも、製造工程でプレス条件を調整すれば対応できると考える設計者もいます。しかし、工程調整による改善効果は限定的です。
銅面積差が20パーセントを超える場合、温度や圧力を調整しても反りを根本的に防ぐことは困難です。
正しい対策
銅バランスの本質は設計にあります。
製造工程はあくまで補助的な役割であり、設計段階で最適化されていなければ、量産時の安定性は確保できません。
まとめ
多層基板の銅バランスに関する誤解の本質は、原理理解の不足と「大丈夫だろう」という楽観的判断にあります。
重要なのは、数値に基づいた正確な管理、合理的な銅追加、分布の均一性、そして設計段階での徹底した確認です。
設計に不安がある場合は、PCBGOGOのような専門DFMレビューを活用することが、最も確実な方法です。
量産後の手直しに比べ、設計段階での確認コストは圧倒的に低く、品質と歩留まりの両立につながります。