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PCB冷却:パッシブからアクティブまでの総合放熱ソリューション
5 0 Sep 08.2025, 14:58:27

PCB冷却の分類と適用シーン

PCB冷却技術は外部動力の有無により、大きく「パッシブ冷却」と「アクティブ冷却」に分けられます。発熱量、設置スペース、コスト要件によって最適な方式を選定することが重要です。

パッシブ冷却(Passive Cooling)は追加の電力を必要とせず、熱伝導、放射、自然対流によって放熱を行います。主に発熱量が10W未満の低消費電力PCBに適しており、スマートホーム機器や小型センサーなどが代表例です。よく使われる方法には、ヒートシンク、放熱シート、PCB銅箔設計の最適化などがあります。たとえばスマートバンドでは、銅箔面積を広げ、外装素材と組み合わせるだけで十分な放熱効果を得られます。

一方、アクティブ冷却(Active Cooling)はファンやポンプなどの動力部品を用いて強制的に熱を排出します。これは発熱量が10Wを超える中高出力PCBに適しており、サーバー、産業用インバーター、ゲーミングノートPCなどで多く採用されています。強制空冷、水冷、相変化冷却などが代表的で、例えばゲーミングPCのCPUやGPUでは、ファン+ヒートパイプ+ヒートシンクの組み合わせによって高い冷却性能を実現しています。また、両者を組み合わせたハイブリッド冷却方式も存在し、負荷変動が大きいEV用OBC(オンボードチャージャー)のPCBなどで活用されています。低負荷時はパッシブ放熱、高負荷充電時にはファンを稼働させ、効率と省エネを両立させます。

PCBパッシブ冷却の設計ポイント

パッシブ冷却は構造がシンプルでコスト効率に優れていますが、効果的な放熱には設計上の工夫が不可欠です。

まず重要なのはヒートシンクの選定と取り付け方法です。放熱性能はフィンの表面積、厚み、材質に左右されます。アルミ製ヒートシンク(熱伝導率205W/(m?K))は中低出力に、銅製ヒートシンク(401W/(m?K))は高出力向けに適しています。LEDドライバPCBでは、アルミ製ヒートシンクを導熱接着剤でチップに密着させ、チップ面積の5~10倍の放熱面積を確保することで、効率的に熱を拡散できます。

さらに、PCBレイアウトの最適化も重要です。自然対流を促進するためにPCBはできるだけ垂直に配置し、水平設置による熱だまりを防ぐ必要があります。発熱部品は基板の上部に配置することで、上昇気流により熱が外部に抜けやすくなります。例えばSTB(セットトップボックス)のPCBでは、電源ICを基板上部に配置し、筐体の通気孔と組み合わせることで自然放熱を強化できます。

また、基材と銅箔設計も放熱性能に直結します。アルミ基板などの高熱伝導性材料を使用することで効率的な熱伝導が可能です。さらにPCB表面に「放熱メッシュ」(格子状の銅箔)を配置すると、空気との接触面積が増え、放射冷却効果を高められます。

PCBアクティブ冷却の技術とメリット

アクティブ冷却は外部動力を活用することで放熱効率を飛躍的に高められます。

もっとも一般的なのは強制空冷です。ここで重要なのはファンの風量(CFM)と風圧が放熱要求を満たすことです。たとえばサーバー用CPUファンでは50CFM以上の風量が必要とされます。また、風道設計も欠かせません。「前面吸気?背面排気」といったエアフローを設計することで、短絡流を防ぎ、冷却効果を最大化できます。

さらに、液冷システムは100Wを超える超高発熱PCBに最適です。データセンター用サーバーや大電力インバーターがその典型です。液冷は冷却液(水やエチレングリコール水溶液など)の循環で熱を搬送します。システムはポンプ、ラジエーター、水冷ブロックで構成され、ブロックを発熱源に密着させて熱を吸収し、ラジエーターでファンにより空気中へ放散します。空気より数千倍高い熱伝導率を持つ液冷は、放熱効率と静音性に優れます。実際、データセンターで液冷を導入した例では、PCBのホットスポット温度が25℃低下し、ファン騒音は65dBから40dBまで低減しました。

PCB冷却方式の選定と最適化プロセス

PCBの冷却方式を決定する際には、科学的なプロセスに基づく選定が必要です。

第一に放熱ニーズの評価です。PCB全体の発熱量を算出し、許容動作温度(通常60℃~85℃)を確認します。例えば発熱量30W、上限75℃の産業用電源PCBでは、アクティブ冷却が不可欠です。

次に初期選定を行います。小型化が求められる民生電子機器ではスペース制約を重視し、粉塵環境ではファンの故障リスクを考慮する必要があります。コストとのバランスも加味し、複数の候補案を検討します。

その後、熱シミュレーション(Flothermなど)による温度分布の解析で候補案を比較します。例えば「ファン+ヒートシンク」と「液冷」を比較し、前者で十分冷却可能かつ低コストであれば採用されます。

次に試作検証です。試作PCBを製作し、サーモグラフィーで実測します。もし温度が想定以上に高ければ、ヒートシンクの大型化や風量増加といった修正を加えます。

最後に長期信頼性試験を実施します。高温?高湿環境や温度サイクル試験で冷却性能を確認し、材料劣化や部品故障による性能低下を防ぎます。特に車載PCBでは1000時間を超える温度サイクル試験を行い、安定的な冷却を保証することが一般的です。

このように、PCB冷却技術はパッシブからアクティブ、さらにはハイブリッド方式まで多岐にわたります。適切な冷却方式を選択し最適化することは、製品の信頼性と性能を確保するために欠かせません。


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