1. はじめに
TWSイヤホンは3cm×2cm×1cmという極小サイズの中に無線電源PCB(充電コイルと制御回路)とBluetoothモジュール(2.4GHz)が搭載されるため両者の距離は5mm未満になることが多くEMC干渉による「充電時のノイズ」と「Bluetooth切断」が故障原因の約38パーセントを占めています。あるTWSブランドでは無線電源PCBのEMC放射がGB/T 17799.3限値を超過し市場投入後に「充電するとノイズが出る」というユーザー苦情が増加し10万台を回収し損失は1200万円を超えました。
TWSイヤホン開発では限られた空間で無線充電効率とEMC適合性を両立させる必要があります。PCBGOGOは60社以上のTWSメーカーに無線電源PCBを提供しEMC試験での適合率は100パーセントです。本稿ではEMC干渉の根本原因基準要件フィルタ設計を解説し実際の問題解決を支援します。

2. 技術の核心
TWSイヤホンの無線電源PCB EMC対策にはGB/T 17799.3(電磁両立性一般基準)5.2条の携帯機器放射限値に従う必要があります。干渉原因は主に三つあります。
一つ目は不適切な接地設計です。無線電源PCBを単点接地(接地抵抗1Ω以上)にすると放射は58dBμV/mに達し多点接地(接地抵抗0.5Ω以下)と比べて2.3倍になります。PCBGOGO EMCラボの試験では単点接地のBluetooth切断率は15パーセント多点接地は3パーセントです。
二つ目はコイル放射です。無線充電コイルの動作周波数は110kHzから205kHzでシールドが無い場合放射値は54dBμV/m(GB/T 17799.3限値)を超えBluetooth2.4GHz信号に干渉します。
三つ目はフィルタ不足です。電源入力ラインにフィルタコンデンサが無いと1MHzから100MHzの高周波ノイズが伝導しイヤホンのノイズを引き起こします。IPC 2222(プリント基板EMC設計ガイド)4.3条に適合する設計が必要です。また無線電源PCBとBluetoothモジュールの距離は3mm以上が推奨されGB/T 18268(測定不確かさ)6.4条では距離が1mm短くなるごとに放射が6dBμV/m増加しBluetoothのSNRは8dB低下します。
3. 実務的な対策
3.1 EMC抑制の四つの基本
接地設計
一 無線電源PCBはスター型多点接地を採用する。接地ビア径0.3mm間隔2mm接地抵抗0.5Ω以下を維持する。測定には接地抵抗計JPE GR 200を使用する。
二 コイル接地端をPCB主グランドに接続し長さ5mm以下に抑えて接地ループを防止する。PCBGOGO EMC DFMシステムJPE EMC 2.0で接地経路を自動チェックする。
コイルシールド
一 コイル下に厚さ0.05mmの銅箔シールド層を敷く。コイル面積の120パーセント以上をカバーし接地抵抗を0.3Ω以下とする。
二 シールド層とコイルの距離を0.1mm確保し短絡を防ぎ導電率98パーセント以上のPCBGOGO専用銅箔を使用する。
フィルタ設計
一 電源入力に10μF Xコンデンサ(PCBGOGO推奨 TDK C320C106K3R2TA 耐圧10V)と0.1μF Yコンデンサ(TDK C4532X7R1E104K 耐圧25V)を並列接続しπ型フィルタを構成する。
二 コイル引き出し線に22μH共通モードチョーク(TDK NLV25T 220J PF)を直列配置し共通モード干渉を抑制する。
距離管理
無線電源基板とBluetoothモジュールの距離は4mmプラスマイナス0.2mmに設定しPCB端から筐体金属部品まで1mm以上確保して放射結合を低減する。
3.2 EMC試験と検証
放射試験
GB/T 17799.3に基づきEMC暗室JPE EMC Chamber 10を使用する。
一 周波数30MHzから1GHz放射限値54dBμV/m以下
二 無線充電時の2.4GHz帯放射は48dBμV/m以下
伝導試験
電源入力の伝導干渉についてGB/T 17799.2に基づき150kHzから30MHzの限値60dBμV以下で確認する。
機能検証
充電中のBluetooth動作確認を行う。
一 接続距離10mで1時間あたりの切断1回以下
二 音楽再生時にノイズ無しSNR80dB以上を音響解析装置JPE Audio 500で測定する。
まとめ
TWSイヤホン無線電源PCBのEMC対策では接地シールドフィルタ距離の四点が最重要です。目的は放射干渉と伝導干渉を同時に抑えることです。PCBGOGOはEMC DFM事前審査で接地やシールドの欠陥を回避しEMC暗室で放射と伝導を検証し量産ラインではフィルタ部品を高精度で実装します(位置誤差0.1mm以下)。EMCを原因とする「充電時ノイズ」や「通信切断」を根本から改善し製品品質とユーザー体験を向上させます。