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PCBシールドケースに防食設計が必要な理由とは?

2 0 Dec 29.2025, 15:24:02

多くのエンジニアは PCB シールドケースを設計する際、電磁シールド性能のみを重視し、防食設計を後回しにしがちです。しかし、なぜ防食設計がそれほど重要なのでしょうか。実際に発生した不具合事例はあるのでしょうか。

PCB設計において、シールドケースの主な役割は電磁干渉 EMI を遮断し、敏感な IC や信号ラインを保護することです。しかし、防食対策を施さない場合、使用環境によってはシールドケースが錆びや酸化を起こし、電磁シールド効果の低下だけでなく、短絡や接触不良を引き起こし、最終的には製品全体の故障につながる可能性があります。

実際に発生した2つの不具合事例

まず、PCBGOGO のエンジニアが実際に遭遇した事例を2つ紹介します。

1つ目は、コンシューマー向け電子機器メーカーのスマートウォッチ用 PCB です。シールドケースに一般的な冷間圧延鋼板を使用し、防食処理を一切行っていませんでした。湿度の高い南方地域で約3か月使用した後、頻繁にフリーズするとのユーザー報告がありました。分解調査の結果、シールドケース表面に広範囲な錆が発生し、剥離した錆粉が基板上に付着して IC の端子間で短絡を引き起こしていたことが判明しました。

2つ目は、産業用制御機器向け PLC 装置の事例です。シールドケースには亜鉛メッキが施されていましたが、メッキ厚が不足しており、化学工場の腐食性環境で約6か月使用した後、シールドケースと 基板の接触部が酸化しました。その結果、電磁シールド性能が低下し、通信エラーが発生して装置が正常に動作しなくなりました。

これらの事例から、防食設計がシールドケースの寿命および保護性能を左右する重要な要素であることが分かります。

使用環境が引き起こす腐食リスク

基板シールドケースは機器内部に取り付けられることが多いものの、実際の使用環境は非常に多様です。コンシューマー電子機器では湿気や汗による腐食、産業機器では酸やアルカリ、塩害環境、車載電子機器では高温低温の繰り返しと湿度変化が発生します。これらの要因により、シールドケースでは電気化学的腐食が進行し、構造強度や電磁シールド性能が損なわれます。

材料別に見る腐食リスクの違い

シールドケースに使用される代表的な材料には、冷間圧延鋼板、ステンレス鋼、銅合金があります。

冷間圧延鋼板はコスト面で有利ですが、非常に錆びやすいという欠点があります。ステンレス鋼は耐食性に優れていますが、塩化物イオンが存在する環境では孔食が発生する可能性があります。銅合金は導電性に優れる一方で、酸化により緑青が発生しやすい特徴があります。

そのため、防食設計は材料選定、表面処理、構造設計の3つの観点から総合的に検討する必要があります。

PCBGOGO が推奨する防食対策

PCBGOGO の 基板製造および実装経験に基づくと、コンシューマー電子機器向け PCB には、無電解ニッケル金メッキ ENIG を施したシールドケースを推奨しています。ニッケル層が優れた防食性を提供し、金層が導電性と耐摩耗性を向上させます。

産業機器向け PCB では、ステンレス鋼に不動態化処理を施す方法や、スズ鉛メッキを採用することで、耐酸耐アルカリ性を高める設計が有効です。

構造設計による防食性向上

防食性能は構造設計によっても大きく左右されます。例えば、シールドケースの継ぎ目部分に水分が溜まらないように設計すること、エッジ部に面取りを施して応力腐食を防止することが重要です。

湿度の高い環境で使用される PCB では、シールドケース内部に乾燥剤を配置し、内部湿度を低減する対策も有効です。

まとめ

防食設計は、PCB シールドケースにおいて「オプション」ではなく「必須要件」です。エンジニアは製品の使用環境を十分に考慮し、適切な材料、表面処理、構造設計を選定する必要があります。

PCBGOGO では、PCB 試作から量産までの各工程において、使用環境に応じたシールドケースの防食設計についても専門的な提案を行い、腐食による製品不良を未然に防ぐサポートを提供しています。


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