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PCB汚染物の検出方法を徹底解説
71 0 Sep 20.2025, 10:06:15

プリント基板(PCB)の製造において、環境規制への対応と品質保証の核心となるのは「汚染物の正確な検出」です。汚染物の種類や含有量を把握することで、法規制に適合しているかを判断し、さらに汚染源を特定できます。PCBに含まれる代表的な汚染物は「重金属」「ハロゲン化合物」「揮発性有機化合物(VOCs)」であり、それぞれに適した検出方法があります。また、検査シーンも研究所での精密分析から、生産現場での迅速なスクリーニングまで多岐にわたります。本記事では、PCB汚染物の代表的な検出手法について、原理、適用シーン、注意点を体系的に解説します。

重金属汚染物の検出:ICP-MSと原子吸光法

PCB中に含まれる鉛、カドミウム、水銀、六価クロムといった重金属は、ppm単位での精密検出が求められます。代表的な方法が「ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)」と「AAS(原子吸光法)」です。

ICP-MSは、試料を酸で分解して金属イオンを液体化し、プラズマでイオン化して質量分析計で測定する方法です。ppbレベルの高感度分析が可能で、複数の重金属を一度に測定できるため、RoHS認証用の公式レポート作成にも広く使われています。一方、AASは特定波長の光を重金属原子に照射し、吸収度合いから濃度を算出する方法です。単一元素の確認に適しており、工場の簡易検査や入荷時のチェックでよく用いられます。

また、三価クロムと六価クロムを区別できないため、六価クロムは別途「分光光度法(二フェニルカルバジド法)」による専用検査が必要です。

ハロゲン化合物の検出:イオンクロマトグラフィーと酸素ボンベ燃焼法

PCBには臭素系難燃剤や塩素系化合物といったハロゲンが含まれる場合があります。これらはRoHS指令で規制されているため、正確な分析が不可欠です。

イオンクロマトグラフィー(IC)は、酸素ボンベ燃焼により有機ハロゲンを無機イオン(Cl?、Br?)へ変換し、イオンクロマトグラフで分離?定量する手法です。高い感度と信頼性を持ち、基材やインク中のハロゲン検査に最適です。

一方、酸素ボンベ燃焼後の吸収液をイオン選択電極で測定する方法もあります。こちらは短時間で結果が得られるため、工場現場でのスクリーニングに便利ですが、精度はICに劣ります。

VOCs汚染物の検出:ガスクロマトグラフィーと携帯型検出器

PCB製造工程では、IPA(イソプロピルアルコール)やトルエン、酢酸エチルなどの揮発性有機化合物(VOCs)が発生します。これらは作業環境の安全性や環境規制に直結するため、検出と管理が重要です。

ガスクロマトグラフィー(GC)は、排気ガスや基板表面のVOCsを分離?定量する手法で、実験室レベルでの高精度測定に用いられます。FID検出器を利用することで、mg/m3単位の低濃度まで正確に分析可能です。

現場でのリアルタイム監視には、光イオン化検出(PID)を搭載した携帯型VOCs検出器が有効です。数秒で測定値が表示され、工場内の安全巡回や換気管理に活用できます。ただし、個別成分の識別はできず、総濃度のみが得られる点には注意が必要です。

現場での迅速検査:試験紙とXRF

製造現場では、迅速で簡便な検査方法も求められます。代表的なものが試験紙法とXRF(蛍光X線分析)です。

試験紙法は、六価クロムや鉛を対象とした簡易的な比色検査で、数分以内に合否を判定できます。コストが低く、材料入荷時の一次スクリーニングに最適です。

XRFは非破壊で重金属を検出でき、試料の前処理が不要なため、RoHS適合の確認に広く利用されています。ただし六価クロムは判定できないため、必要に応じて分光光度法を併用します。

PCB汚染物検出の基準とプロセス

PCBの汚染物検出は、国際規格や中国規格に準拠して行う必要があります。代表的なものに、重金属検出ではIEC 62321(RoHS 2.0)、ハロゲン検出ではIEC 61249-2-21、VOCsではGB/T 18883があります。

標準的なプロセスは以下の通りです。まず代表性のあるサンプルを採取し、消化-燃焼-抽出などの前処理を行います。その後、適切な分析装置で測定し、データを処理してレポートを作成します。第三者検査機関でのRoHS認証用分析もこの手順に基づきます。

まとめ

PCBに含まれる汚染物を正確に検出することは、法規制対応だけでなく、製品の品質保証や企業の信頼性向上に直結します。ICP-MSやGCなどを用いた精密分析は国際認証や環境報告に不可欠であり、一方でXRFや試験紙といった簡易検査は現場での迅速な判断を可能にします。汚染物の種類と検査シーンに応じて最適な方法を選択することが、PCB製造における持続可能な品質管理の鍵となります。


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