AI算力ブームでPCB業界が構造転換へ
老舗電子ブランドが260億円規模の増資で高付加価値分野に本格参入
「人工知能+」政策の加速と算力需要の爆発的拡大を背景に、中国のPCB(プリント基板)大手であるSHENGYI電子(688183)が、最大260億円規模の非公開株式発行を発表した。調達した資金は、AI計算向け高性能PCB分野への集中投資に充てられ、次世代技術革新による産業機会の獲得を狙う。
現在、世界のテクノロジー産業はAIを中心とした大変革期に突入している。AI算力クラスタ、具現化AI(エンボディードAI)、6G通信、低軌道衛星といった新領域が急速に進展し、算力インフラやスマート端末の需要は一段と高まっている。
電子産業の基盤部品であるPCBはこの流れを受け、特にAIサーバーやハイエンドスイッチ向けの高性能PCBの需要が急増。高度な技術要件と複雑な製造プロセスを背景に、これらの高端領域は各社が競う最重要市場となり、PCB産業全体の構造再編を加速させている。

SHENGYI電子が発表した今回の増資計画は、この市場トレンドに的確に対応するものだ。調達資金は主に以下の3分野に投入される:
?AI計算向けHDI(高密度配線基板)生産基地の建設
?高多層算力基板のスマート製造プロジェクト
?運転資金の補填および銀行借入金の返済
そのうち、東莞市東城区に建設予定のAI計算用HDI生産基地は総投資額203.2億円で、調達資金から100億円を充当。工期は36カ月を予定し、稼働後5年目にフル生産に到達する計画だ。
さらに、江西省吉安市井岡山経開区で推進中の高多層算力基板プロジェクトは総投資額193.7億円で、調達資金から110億円を使用。2段階で建設を進め、最長4年間で全面稼働を目指している。両プロジェクトとも現在、発改委備案や環境評価などの前工程が進行中だ。
SHENGYI電子が高性能PCB分野へ大規模投資できる背景には、長年の技術蓄積がある。
同社は戦略的ハイテク分野に対応するため、研究開発投資を継続的に強化してきた。その結果、
?大判基板製造技術
?高階微細ビア(HDI)
?高速信号損失の制御技術
?多種材料の混圧技術
?内蔵キャパシタおよび放熱技術
など、業界トップクラスのコア技術を多数確立し、差別化された競争優位性を形成している。これらの技術基盤が、今回の大型投資プロジェクトの産業化を支える重要な原動力となっている。
同社は今回の増資について、主力事業と完全に一致するものであり、国家産業政策の方向性にも合致すると説明する。高性能PCBの生産能力強化と技術の産業応用を進めることで、AIサーバーやハイエンドスイッチといった成長分野の国内外顧客をさらに拡大し、同質化競争を打破する構えだ。
業界関係者は、プロジェクトの着実な進展によって、SHENGYI電子の収益力と資本力が一段と向上し、AI算力が牽引するPCB産業の変革期において、より大きな市場シェアを獲得する可能性が高いと見ている。これにより、中国のPCB産業の高付加価値化と高品質成長に新たな推進力が加わるだろう。