
アルミ基板は特殊な金属基板プリント回路基板であり、アルミ合金を基材としています。優れた放熱性能、機械強度、コスト効率を兼ね備えることから、高出力電子機器において従来のFR-4基板に代わる選択肢として注目されています。アルミ基板の基本構造と特性を理解することは、最適なPCB設計と選定の前提であり、他の基板との違いを明確にする重要なポイントです。
PCBアルミ基板は「銅箔-絶縁層-アルミ基材」の三層サンドイッチ構造を採用しており、それぞれの層が明確な役割を持ち、相互に機能することで基板全体の性能を決定しています。銅箔層は導電回路のキャリアとして機能し、厚さは通常18μm、35μm、70μmで、特殊な高出力用途では105μmも選択可能です。銅箔は高導電性(抵抗率≤1.72μΩ.cm)と優れたエッチング性を備え、線幅精度(±0.05mm)を確保します。表面処理は裸銅、スズめっき銅、金めっき銅があり、スズめっき(Sn 2-5μm)が最も一般的で、はんだ付け性とコストのバランスに優れています。
絶縁層は銅箔とアルミ基材の間に位置するPCBアルミ基板の技術的核心であり、絶縁性と導熱性を両立する必要があります。厚さは50μm、75μm、100μmが一般的で、主成分はエポキシ樹脂、セラミック充填剤(酸化アルミ、窒化ホウ素など)、硬化剤です。高品質の絶縁層は体積抵抗率≥101?Ω.cm、熱伝導率λ=1.0-5.0W/m.K(FR-4は約0.3W/m?K)、ガラス転移温度Tg≥150℃で高温下でも性能が安定します。
アルミ基材層は放熱と支持体として機能し、純度99.3%以上のアルミ合金(1050、1060、6061など)が主に使用されます。厚さは1.0mm、1.5mm、2.0mmが一般的で、特殊用途では最大5.0mmに達することもあります。1050アルミは純度が高く(99.5%)、導熱性(λ=201W/m.K)に優れ、高放熱要求に最適です。6061アルミはMg.Si合金元素を含み、機械強度が高く(引張強度≥205MPa)、自動車電子など衝撃耐性が必要な用途に適しています。表面はクロメートパッシベーションなどで処理され、絶縁層との接着強度(剥離強度≥1.5N/mm)を向上させます。
PCBアルミ基板は絶縁層材料や導熱性能、用途に応じて分類されます。一般型アルミ基板(導熱率1.0-2.0W/m.K)は、絶縁層にエポキシ樹脂と低充填酸化アルミ(30%-40%)を使用し、コストが低めで中低出力用途に適しています(例:LEDランプ、小型電源)。耐温範囲は-40℃~120℃、絶縁破壊電圧≥2.5kV/mmで、パワー密度<5W/cm2の機器に対応可能です。高導熱型アルミ基板(導熱率2.0-4.0W/m.K)は、絶縁層に高導熱セラミック充填剤を追加し、放熱性能を向上させます。中高出力用途(LED街路灯、工業用電源モジュール)に適し、パワー密度5-15W/cm2に対応可能です。超高導熱型アルミ基板(導熱率>4.0W/m.K)は、特殊絶縁材料や微小導熱チャンネルを採用し、極高出力用途(EVインバータ、レーザー装置)に適しています。導熱率は5.0-8.0W/m.K、熱抵抗≤0.5℃.in/W、耐温範囲-55℃~200℃、UL 94 V-0難燃認証取得品もあります。
PCBアルミ基板は従来のFR-4基板や他の金属基板(銅基板、鉄基板)と比較して、放熱性能、コスト、機械強度の面で優れています。アルミ基材の高導熱性(λ=100-230W/m.K)と絶縁層の設計により、放熱効率はFR-4の5-10倍に達します。1.5mm厚アルミ基板で1W LED使用時、結温はFR-4比25-40℃低下し、寿命が30%-50%延長されます。アルミの密度は2.7g/cm3で、銅の約1/3、重量は銅基板より60%軽く、輸送-設置コストを低減します。価格は銅の約1/5で、高導熱アルミ基板は銅基板の30%-50%で提供可能です。機械強度も高く、曲げ強度≥150MPa、衝撃耐性(Izod衝撃強度≥20kJ/m2)に優れ、振動や落下に耐えます。アルミ基材は金属のシールド性能(40dB@1GHz)を持ち、外部電磁干渉や内部信号の放射を低減できるため、追加シールド不要で設計を簡略化できます。
他基板との比較では、FR-4基板は導熱率0.3W/m.Kでパワー密度<1W/cm2向けであるのに対し、アルミ基板は高出力対応、機械強度-耐温性に優れますが、コストは1.5-3倍です。銅基板は導熱性が優れますが、重量大-コスト高で極端高出力用途向けです。鉄基板は機械強度が高いものの導熱性が低く、重量も大きいため、放熱より衝撃耐性を重視する用途向けです。アルミ基板は放熱、軽量性、コストのバランスに優れ、幅広い電子機器に適しています。