全工程で予防を行っても、PCB電鍍において少量の欠陥(通常は1%以下)が発生する可能性があります。このため「対象別修復」によって廃棄ロスを抑制する必要があります。同時に「修復不能な欠陥」の廃棄基準を明確にし、無駄な修復コストを防ぐことが重要です。修復では「最小損傷、精密操作」を原則とし、不適切な処理による二次欠陥(例として銅瘤研磨時のパターン傷)を防止します。一方で廃棄の判断は「修復コスト」と「製品信頼性」のバランスをとることが必要です。例えば軽微なめっきムラは修復可能ですが、孔壁無銅が広範囲に発生した場合は廃棄とすべきです。本稿では、基板電鍍における一般的な欠陥の修復方法、修復後の検査要件、廃棄基準を解説し「適正修復と科学的廃棄」によるコスト管理体系の構築を支援します。

1. 電鍍欠陥の主要修復方法: 欠陥別の正確な処理
欠陥の種類と重度によって、使用する工具や手順が大きく異なります。代表的な修復技術は以下の通りです。
1.1 孔壁の無銅/薄銅: 部分補鍍による導通確保
孔壁無銅/薄銅は「局部補鍍」で銅層を再形成します。小範囲の欠陥(1枚のPCBで無銅孔が5個以下)は修復対象、大面積(10個超)は廃棄推奨です。
準備工具
局部電鍍ペン(銅陽極)、酸性銅めっき液(硫酸銅200--250g/L、硫酸50--100g/L)、耐水研磨紙800番、脱脂綿、IPA
手順
清浄処理: 研磨紙で孔壁を軽く研磨後、IPAで拭き取り、表面の酸化物を除去
活性化: 10%硫酸に1--2分浸漬、水洗、乾燥
局部補鍍: 電流密度0.5--1A/dm2で補鍍。25μm補鍍の場合の作業時間は30--40分。鍍層測厚計で厚みを測定
後処理: 水洗後、導通抵抗を測定
基準
補鍍後の孔壁厚みは25μm以上、導通抵抗は100mΩ以下
1.2 めっき剥離/密着不良: 部分再鍍
小範囲(単一部位10mm2以下)は修復対象、20mm2超は廃棄推奨です。
手順概要
剥離部の加熱除去(300--320℃)、研磨、IPAでの清掃後、銅またはニッケル金の再鍍を実施
ニッケル層5?8μm、金層0.1--0.3μmを目安
再鍍後はテープ試験で密着性を確認し、塩水噴霧試験48時間で腐食なし
1.3 ピンホール/気泡: 充填と再鍍
適用範囲は「非貫通、小径欠陥」(ピンホール直径0.03mm以下、気泡0.1mm以下)。貫通性ピンホールは廃棄対象です。
主要ポイント
銅系導電ペーストで充填し、150℃で5?10秒加熱硬化後、局部補鍍5--10μmを実施
顕微鏡(200倍)で平滑性を確認、絶縁抵抗は1011Ω以上を基準
1.4 銅瘤/バリ: 研磨除去
銅瘤直径0.05mm以下は手研磨、0.08mm以上は小型グラインダー(6000rpm)で除去
研磨後はAOIで表面平坦度を確認し、隣接ラインの抵抗値1000Ω以上を確認
2. 修復後の検査要件: 修復品質の保証
修復後のPCBは「外観、厚み、密着性、電気特性」の4項目を確認します。
外観
顕微鏡(200倍)で観察し、傷や色調差がないこと
厚み
X線膜厚計で設計値±10%以内(例: 設計25μmの場合22.5--27.5μm)
密着性
テープ試験で剥離なし、曲げ試験(半径5mm、10回)で剥離なし
電気特性
導通抵抗: through-hole修復後100mΩ以下
絶縁抵抗: 隣接ライン間101Ω以上(湿度試験)
信頼性
熱衝撃260℃10秒、塩水噴霧48時間を通過
3. PCB電鍍欠陥の廃棄基準: コストと信頼性の判断
以下の場合は修復しても信頼性確保が困難なため廃棄とします。
孔壁無銅/薄銅
1枚のPCBで無銅孔10個超、多層板では5個超
補鍍後厚み20μm未満、導通抵抗500mΩ超
めっき剥離
単一部位20mm2超、または総剥離面積がPCB全体の5%以上
ピンホール/気泡
貫通性ピンホール、1cm2あたり5個超
気泡直径0.2mm超、または総面積が基板の3%以上
銅瘤/バリ
研磨後ライン幅が10%以上減少
隣接ライン距離が0.05mm未満のまま
膜厚
設計値±30%超(例: 設計25μmの場合17.5μm未満または32.5μm超)
PCB電鍍欠陥は「適切な修復でコストを抑えつつ、製品の長期信頼性を確保する」ことが重要です。欠陥の種類、面積、数量、電気特性を定量評価し、修復可能範囲と廃棄基準を明確に設定することで、製造現場の判断が高速化し全体コストの最適化につながります。