
PCB(プリント基板)の製造において、表面処理の選択は信頼性、はんだ付け性、耐久性に大きく影響します。特に RoHS 対応や細ピッチ部品の使用を前提とする設計では、HASL(無鉛)とENIG(化学ニッケル金メッキ)という二つの主要な表面処理技術の理解が欠かせません。
HASL 無鉛とは何か
HASL 無鉛は、PCB 表面に無鉛はんだ(主にスズと銀などの合金)を塗布した後、熱風で余剰はんだを除去して平滑なはんだ層を残す表面処理技術です。コスト面で有利で可焊性が高く、比較的容易に実装や繰り返しのリフロー処理に対応できる点が特徴です。
ENIG(化学ニッケル金メッキ)とは何か
ENIG は化学的なニッケルメッキに続いて、極薄の金メッキを施す二段階処理による表面技術です。ニッケル層(約 3–6 μm)にさらに金層(約 0.05–0.2 μm)を重ねることで、耐酸化性や耐腐食性を兼ね備えた滑らかな表面を実現できます。HDI 基板や細間隔 BGA 実装などの高精度アプリケーションに最適です。
HASL 無鉛のメリットとデメリット
メリット:コスト効率が高く、可溶性はんだ層によって堅牢なはんだ接合が可能です。多くの製造ラインで標準対応しており、返工性にも優れております。
デメリット:表面が均一でなく、熱空洞やはんだ盛り上がり等が発生しやすいため、BGA や QFN といった細ピッチ部品には適しておりません。また、高温処理による基板へのストレスリスクがあります。
ENIG のメリットとデメリット
メリット:非常に平坦で滑らかな表面を提供し、細間隔部品や高密度(HDI)実装に適しております。金の防錆性能により長期保存にも耐え、環境対応 PCB にも適しています。
デメリット:加工コストが高く、適切な化学処理管理が必要なため、製造プロセスの複雑さが増します。不適切な管理下では「黒はんだパッド」現象(Black Pad)が発生するリスクもあります。
選定のポイント(性能-用途に応じた選択)
設計や製造においては、コスト優先の一般用途では HASL 無鉛が向いており、特に多回リフローや予算制限のあるプロジェクトに適しています。一方、高周波設計、細ピッチ実装(BGA-QFN)、環境対応製品などには ENIG の平坦性と耐久性が大きな利点となります。
まとめ
HASL 無鉛と ENIG は、それぞれ異なる強みと課題を持つ PCB 表面処理技術です。プロジェクトの要求仕様、部品構成、信頼性要件、コスト目標に応じて最適な方法を選ぶことが、品質と信頼性を兼ね備えた製造を実現する鍵となります。
ご不明な点や実装用途に応じたアドバイスが必要な際は、お気軽にお問い合わせください。Expertな技術チームが最適な表面処理選定をサポートいたします。
---pcbgogo