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多層 PCB における銅バランスを軽視してはいけない理由

2 0 Dec 16.2025, 14:30:45

PCB 技術運営の現場にいると、エンジニアから次のような声を頻繁に聞きます。「多層基板のラミネーション後に反りが出る」「層間剥離が発生した」「量産に入った途端、歩留まりが急落した」。原因を徹底的に調べた結果、最終的に判明するのが「銅バランス不良」です。銅バランスは細かい設計要素と考えられがちですが、実際には PCB の機械的安定性と電気特性の両方に直結する重要要因です。本記事では、銅バランスの本質的な重要性と、エンジニアが陥りやすい典型的な落とし穴を解説します。

1. 銅バランスとは何か

多層基板における銅バランスとは、各層の銅箔面積および分布をできるだけ均一に保つことを指します。特に対称層、例えばトップ層とボトム層、L2 層と L5 層などでは、銅面積の差を極力小さくする必要があります。

多層板をサンドイッチ構造に例えると、各層の銅箔は中身の具材に相当します。一方だけ具材が多く、もう一方が少ないと、加熱加圧時に応力が偏り、基板全体が反ってしまいます。

一般的な業界目安として、対称層間の銅面積差は 10% 以下が推奨され、15% を超えると不良リスクが顕著に高まります。また、基板全体の銅カバレッジは 40% から 70% の範囲が望ましく、過不足はいずれもラミネーション品質に悪影響を与えます。
PCBGOGO の量産データでは、銅バランス不良が原因となる不良は、多層板全体不良の約 30% を占め、特に 6 層以上の高密度基板で顕著です。


2. 銅バランス不良がもたらす 3 つの致命的影響

基板反りによる実装不良

最も頻発する問題です。
例えば、ある 8 層の産業用制御基板では、トップ層の銅面積が 25%、ボトム層が 55% となっており、ラミネーション後の反り量が 0.8mm を超えました。その結果、筐体に組み込めず、全ロット再加工となりました。
銅面積差が大きいほど内部応力が集中し、反りやクラックのリスクが増大します。

層間剥離やブリスターの発生

銅と樹脂基材では熱膨張係数が異なります。銅バランスが崩れると、加熱時の収縮量に差が生じ、内部応力が蓄積されます。
その後のリフロー工程や実使用時の温度変化によって応力が解放され、層間剥離や気泡が発生します。
PCBGOGO の試験では、銅バランス不良基板は 85℃、85% RH の湿熱試験後、層間剥離率がバランス良好基板の約 4 倍となりました。

電気特性の不安定化

銅バランスはインピーダンス整合にも影響します。
高周波多層基板では、信号層の銅分布が不均一だと、特性インピーダンスのばらつきが ±5% を超え、反射やクロストークが増加します。その結果、測定データが安定せず、製品仕様を満たせなくなる可能性があります。


3. エンジニアが陥りやすい 3 つの銅バランスの落とし穴

総面積だけを見て局所分布を無視する

対称層の銅面積が同程度でも、一方が大面積のベタ銅、もう一方が細い配線のみの場合、局所応力が不均衡となり反りが発生します。

無計画な補銅で逆効果になる

銅面積が不足しているからと、孤立した補銅を追加すると、基材との密着性が悪くなり、ラミネーション後にブリスターが発生しやすくなります。補銅は必ず GND や電源層と接続し、連続した銅ネットワークにする必要があります。

内層の銅バランスを軽視する

トップ層とボトム層だけに注目し、L2、L3 などの内層を見落とすケースが多く見られます。多層基板は全層同時に圧合されるため、内層の銅不均衡も基板全体の変形要因となります。
PCBGOGO の DFM レビューでは、表層だけでなく全層の銅分布を重点的に確認します。


4. PCBGOGO が推奨する実践的な銅バランス対策

設計段階で銅面積を定量評価する

PCB CAD の銅面積統計機能を使用し、各層完成時に対称層と比較します。差が 10% を超える場合は、銅が少ない領域にメッシュ銅を追加し、銅が多い領域では電気特性に影響しない範囲で開口を設けます。

補銅は必ず連続構造にする

補銅は孤立させず、GND 層や電源層と接続するか、メッシュ構造とします。メッシュ間隔は 0.8mm から 1.2mm 程度が推奨され、放熱性と信号品質のバランスが取れます。

DFM レビューを活用する

銅バランスに不安がある場合は、PCBGOGO の無償 DFM レビューを活用してください。専用ツールで各層の銅分布を解析し、具体的にどこで補銅または削減が必要かを明確に提案します。量産段階でのトラブルを未然に防ぐことが可能です。


まとめ

多層 PCB の銅バランスは感覚論ではなく、設計段階で管理できる明確な技術要素です。
量産後に不良が発生してから対処するよりも、事前に銅バランスを最適化することで、コスト削減と品質安定の両立が可能になります。

複雑な多層基板で銅バランス調整に悩んだ場合は、PCBGOGO の技術チームに相談してください。多数の量産実績に基づいたノウハウで、最短ルートの解決策を提供します。


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