なぜはんだは PCB のリードに沿って上昇するのか
SMT 実装および PCBA 製造の分野では、理想的なはんだ接合を実現することが最終的な目標です。しかし実際の製造現場では、「はんだ吸い上がり(はんだウィッキング)」と呼ばれる品質不良が発生することがあります。
これは、溶融したはんだが部品リードに沿って上方へ流れ、結果としてパッド上のはんだ量が不足したり、リード部にはんだが過剰に付着したりする現象です。場合によっては、ブリッジや接合不良につながり、PCBA の信頼性や電気的性能に重大な影響を与えます。
この現象の根本原因を正しく理解し、的確な工程管理を行うことが、安定した高品質 PCBA を実現する鍵となります。

はんだ吸い上がり現象が発生する理由
はんだが過度にリード側へ上昇する現象は、主に熱、材料、物理特性が複合的に作用することで発生します。
1. リフロー温度プロファイルの不適切さ
最も一般的な原因は、リフロー炉の温度プロファイル設定です。
リフロー工程において、部品リードの温度上昇が PCB パッドよりも早い場合、パッドが十分に濡れる前に、溶融はんだが温度の高いリード側へ毛細管現象によって引き寄せられます。
特に予熱ゾーンやソークゾーンでの温度差が大きいと、この現象が顕著になります。
2. はんだペーストの品質問題
助剤活性が弱い、または金属含有量が不足しているはんだペーストを使用すると、パッド上での濡れ性が低下します。
その結果、はんだは安定してパッドに留まらず、リード側へ移動しやすくなります。
3. 加熱の不均一性
リフロー炉内の各ゾーンで温度制御にばらつきがある場合、局所的なホットスポットが発生します。
これにより、部品と PCB の加熱が不均一になり、熱バランスの崩れがはんだ吸い上がりを助長します。
4. 治具や固定方法の影響
不適切に設計された治具や固定具は、熱流を遮断したり、部品の姿勢を乱したりする原因となります。
その結果、リードとパッド間の温度差が拡大し、毛細管現象が発生しやすくなります。
戦略的対策
はんだ吸い上がりを防ぐための工程改善
1. 材料とプロセス条件の最適化
高品質な合金組成とはんだ助剤特性を持つはんだ材料を使用することで、均一な濡れ性を確保します。
また、リフロー温度プロファイルの見直しは極めて重要です。
予熱およびソーク工程において、部品リードと PCB パッドの温度差を最小限に抑え、ピーク温度到達前に両者が均一に加熱されるよう調整する必要があります。
2. 設備性能の向上
高性能なリフロー炉は、安定したはんだ品質を実現する上で不可欠です。
加熱効率の高いヒーターと精密な炉内制御システムを備えた設備を使用することで、基板全体を均一な温度分布で加熱することが可能になります。
さらに、温度プロファイルを常時監視-記録するプロセス管理体制を構築することで、工程の再現性と信頼性を高めることができます。
3. 治具および設計面での見直し
使用している治具は定期的に点検し、不要な熱勾配や部品位置ズレを引き起こしていないか確認する必要があります。
場合によっては、PCB パッド設計の見直しも有効です。
パッドサイズや放熱構造を最適化することで、パッドとリードの熱吸収バランスを調整し、はんだの過剰な吸い上がりを抑制できます。
既存不良への対応
はんだ吸い上がりが発生した場合のリワーク手順
完成した PCBA に不具合が確認された場合は、基板の信頼性を維持するため、慎重かつ正確なリワークが求められます。
まず、精密はんだごてやホットエアリワークステーションを使用して、リード上の余分なはんだを溶融させます。
吸い取り線や綿棒を用いて、周辺パッドや配線を損傷しないよう注意しながら除去します。
次に、リードに熱損傷や物理的変形がないかを目視検査します。
損傷が確認された場合は、専用工具を使用して部品交換を行います。
その後、高純度アルコールや推奨洗浄剤で作業箇所を洗浄し、フラックス残渣や汚染物を完全に除去します。
必要に応じて局所的な再はんだ付けを行い、確実で信頼性の高い接合を形成します。
最終的に、機能テストを実施し、回路性能が正常に回復していることを確認します。
まとめ
欠陥のない PCBA を実現するために
はんだ吸い上がりのような不具合を防止するためには、SMT 工程に対する深い理解、高品質な材料、そして高度な設備と工程管理が不可欠です。特に高信頼性が求められる PCBA 製品では、その重要性はさらに高まります。
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