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PCBの電磁両立性におけるグラウンドプレーン設計のよくあるミスと是正対策

1 0 Dec 24.2025, 16:56:02

PCB設計において、グラウンドプレーン設計の「小さなミス」が、EMC試験での「大きな失敗」につながることは少なくありません。多くのエンジニアが時間をかけて設計したPCBが、最終的にグラウンドプレーンの問題によって何度も修正を余儀なくされ、工数とコストが増大するケースが見られます。本記事では、PCBの電磁両立性におけるグラウンドプレーン設計の代表的なミスを整理し、PCBGOGOの是正事例を交えながら、実践的な対策を解説します。

まず最も多い問題が、グラウンドプレーンを大きく分割し、複数の孤立した領域を形成してしまう設計です。アナログGND、デジタルGND、電源GNDなどを区別する目的で分割したものの、相互に有効な接続が行われていないケースが見受けられます。このような設計では信号のリターンパスが遮断され、高周波電流が空間放射によって戻るしかなくなり、放射ノイズが大幅に増加します。対策としては、「エリア分離+単一点接続」を採用します。領域分割は維持しつつ、分離部分を0Ω抵抗、フェライトビーズ、またはスルー型コンデンサで単一点接続し、高周波電流に低インピーダンスのリターンパスを与えます。PCBGOGOが対応した産業用制御PCBでは、当初3つの孤立したグラウンド領域が存在し、EMC試験で放射エミッションが10dBμV/m超過していました。単一点接続に変更した結果、放射レベルは12dBμV/m低下し、無事に規格をクリアしました。


次に多いのが、信号配線がグラウンドプレーンの分割スリットをまたいでいるケースです。グラウンドにスリットが存在すると、信号のリターン電流はそのスリットを回避して大きく迂回することになります。理論上、リターンループが長くなるほど電磁放射は強くなり、EMC不良の大きな原因となります。対策としては、可能な限り信号配線が分割スリットを横断しないよう、レイアウト段階で同種回路を集約し、対応するグラウンド領域内で配線を完結させることが重要です。やむを得ず横断する場合は、スリット部分にグラウンドビアのアレイを配置し、リターン電流のブリッジ経路を確保します。ビア間隔は信号波長λの1/20以下とし、ビア径は基板厚に応じて0.3mmから0.5mm程度が一般的です。


3つ目の問題は、デカップリングコンデンサのGND側配線が長く、グラウンドプレーンから離れていることです。デカップリングコンデンサは電源ノイズ抑制の要となる部品であり、そのGND経路が長いと高周波インピーダンスが増加し、本来の効果を発揮できません。対策は「コンデンサはICの電源ピンに近接配置し、GNDは最短距離でグラウンドプレーンに接続する」ことです。GND配線は直近のビアでグラウンドプレーンに落とし、経路長は5mm以下とします。PCBGOGOの設計ガイドラインでは、0402サイズのデカップリングコンデンサにおいて、GND配線長は3mm以下、ビアと端子の距離は2mm以下を基準としています。これにより、電源ノイズ低減とEMC性能の安定化が実現します。


4つ目は、グラウンドプレーンに大きな開口部を設けてしまい、プレーンの連続性を損なう設計です。放熱パッド、金属ブラケット、コネクタなどを避けるために広範囲をくり抜くと、信号下のリファレンスプレーンが途切れ、リターンパスが不安定になるだけでなく、シールド効果も低下します。対策としては、「最小限の開口+グラウンドビアで囲む」設計が有効です。必要最小限のみを開口し、その周囲にグラウンドビアを配置して周辺プレーンと接続します。例えば電源モジュールPCBでは、放熱パッド直下のグラウンドを開口する必要がありますが、その周囲にビアをリング状に配置することで、グラウンドリングを形成し、遮蔽性とリターン機能を維持できます。


5つ目は、多層PCBにおいて信号層とグラウンドプレーンの層間距離が大きすぎる点です。層間距離が広いと、信号層とグラウンド間の結合が弱まり、寄生容量が低下します。その結果、特性インピーダンスが不安定になり、リターンパスのインピーダンスも増加してEMC性能が悪化します。対策としては、信号層とグラウンドプレーンの距離を0.2mm以下に抑え、積層設計では両者を隣接させることが推奨されます。強い結合によりインピーダンスが安定し、リターンループも最短化されます。


グラウンドプレーン設計の問題は細部に潜みがちです。設計段階から「グラウンドの連続性を常に確認する」習慣が重要となります。PCBGOGOではPCB設計レビューサービスを提供し、グラウンドプレーン設計における潜在的なEMCリスクを事前に洗い出すことで、後工程での大幅な修正を防止しています。高信頼性PCBを実現するためには、設計初期からの的確なグラウンドプレーン設計が不可欠です。


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