製造-保管-使用の各段階におけるPCB(プリント基板)の防湿対策は、製品の信頼性と寿命を守る重要なプロセスです。湿気によって引き起こされるさまざまな劣化現象を抑えるため、以下のポイントで対策を強化します。
PCB(印刷回路板)は湿気に弱く、機械強度の低下、通電不良、酸化-腐食、短絡などの重大な不具合を引き起こす恐れがあります。特に長期的に湿度の高い環境に置かれると、元に戻らない損害を受けることもあるため、製造から梱包-保管に至る全過程での防湿対策が不可欠です。
酸化-腐食
湿気が表面の銅層に作用すると酸化が進み、接点不良や信号伝送の不安定を招きます。
絶縁性能の低下
絶縁層に水分が浸透すると、絶縁抵抗が下がり、クロストークや短絡の原因になります。
層間剥離
湿度による基板の膨張が繰り返されることで、多層構造が剥がれやすくなります。
高周波PCBへの悪影響
高周波回路は絶縁性能が非常に重要であり、湿気が誘電率を変化させ、信号遅延や歪んだ伝送を引き起こす可能性があります。
材料の選定
一般向けには FR-4 を使用しますが、湿気吸収を抑える高品質材を選びます(例:高TG FR?4)
高周波用途や耐湿性重視の場合には、水分吸収率が極めて低いPTFEなどを推奨します
金属基板(アルミや銅)は物理的防湿力がありますが、表面コートが必要です
防湿コーティング
クリアラッカー:薄く均一に塗布可能、酸化-腐食防止に有効
シリコーン塗布:耐水-耐熱性が高く、高周波基板に適しています
ポリウレタン塗布:防湿と耐機械性を兼備しています
封止設計
エンクロージャにより防湿性を高める、
防水ゲルによるPCB周囲の気密封止で湿気侵入を防ぎます
製造環境の湿度管理
作業場湿度を40?60%に保ちます
材料ストックは密閉保存し定期的に乾燥処理します
高湿度材料は専用乾燥機で処理します
保管-輸送時の防湿対策
ドライパックや防湿袋に乾燥剤とともに梱包します
輸送中の湿度や温度の管理が重要です
防湿コーティング例:高周波-医療用基板にはシリコーンまたはポリウレタン塗布が効果的です
湿気に敏感な部品の保護:チップや抵抗等の部品に気密パッケージまたは防水ゲルを使用します
温湿度の監視システム:制作-保管環境で常に湿度を監視し、基材の乾燥も適時行います
包装と輸送:エンベロープには防湿袋と乾燥剤を使用し、湿度上昇を防ぎます
湿気対策を怠るとプリント基板の性能が低下し、高周波性や信頼性にも重大な影響が出ます。防湿措置は材料選定から防湿コーティング、封止設計、製造時の湿度管理、保管-輸送まで全体計画が不可欠です。特に高周波回路設計や電気テスト工程では重要度が高く、全プロセスで湿気から基板を守ることが高品質な基板製造には必須といえます。